“アニメでゴジラを描く意味”は? 『ゴジラ S.P』の科学的な視点とエンタメのバランス

 映画を題材とした人気漫画『木根さんの1人でキネマ』の7巻に収録されているゴジラ回に「昭和ゴジラ史は変化の歴史なんです!」というセリフがある。多くの映画作品を題材にしてきた本作の中でも、ゴジラという国民的コンテンツと共に成長してきた女性ファンと、ゴジラシリーズの変化を描いた神回と評判も高い回だ。

 ゴジラという存在について考えるとき、「変化の歴史」という言葉が重くのしかかってくる。そして、いまゴジラは新たな大きな変化を遂げようとしている。今回はテレビアニメ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』が、アニメ版ゴジラとしてどのように向き合い、変化していくのか考えていきたい。

 『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は、2021年の4月より放送が開始されたテレビアニメだ。テレビ局での放送のほか、Netflixで先行配信もされている。アニメ版ゴジラとしては劇場公開された『GODZILLA 怪獣惑星』から始まる3部作などがあるものの、テレビアニメの長編シリーズ作品としては、初の試みとなる。

 注目すべきは脚本を務める円城塔の存在だろう。芥川龍之介賞を受賞するなど、純文学の舞台で活躍する一方で、深い科学への造形を活かしてSF小説も多く執筆しているほか、アニメに関しても『スペース☆ダンディ』の脚本を手がけるなど、幅広い活躍が印象的だ。今作ではシリーズ構成、全話脚本、SF考証と多岐に渡り重大な役割を果たしている。

『GODZILLA 怪獣惑星』(c)2017 TOHO CO., LTD.

 先にあげたポリゴン・ピクチュアズが製作した『GODZILLA』シリーズでは、こちらもSF作品の多い虚淵玄を脚本に起用し、地球の文明が崩壊した後に怪獣が跋扈する世界を描き上げた。今作はその逆に、過去に怪獣が暴れ回ったような記録こそ残るものの、その存在が認知されていない、現代社会を舞台に物語が進行していく。

 放送されている3話までの中では、ラドンが飛び回り人間社会を混乱させていく姿が描かれている。平和な田舎町に突如としてラドンが飛来し、大混乱に陥るかと思いきや、ラドンを観光資源にしようとする人々の強かさに思わず口元がにやける。一方ではラドンは電波塔に釣られて行動することなどを突き止め、巨大なアンテナを利用し、電磁波を出すバイクでラドンを引きつけるなどの科学的な工夫も見受けられる。

 今回の『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は科学的な視点と、エンタメのバランスがとてもいい。神野銘と有川ユンという2人の天才が専攻する学問の専門用語など、かなり難しいセリフが出てくるシーンもある。しかし、それを中和するのが銘のパソコンに入るAIのペロ2だろう。このマスコットキャラクターを演じる久野美咲のかわいらしい声質もあり、時にコミカルに、時に頼もしく銘をサポートする様は、視聴者を和ませるはずだ。