『街の上で』『くれなずめ』などで魅力発揮 若葉竜也の佇まいは映像に奥行きを生み出す
大衆演劇出身で、幼少期から舞台に立ってきた若葉竜也(31)。現在は、映像で光る俳優として人気が高い。連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)でのヒロインの初恋相手・撮影所助監督の小暮役で、人気を博したのも記憶に新しい。しかし、若葉の魅力がより感じられるのは、映画作品だと思う。昨年は『生きちゃった』『AWAKE』など5作品が公開された若葉。今年は、早くも『あの頃。』『街の上で』『くれなずめ』と3作品でその魅力を堪能できる。
2月に公開がスタートし、今もアップリンク渋谷や地方での公開が残る『あの頃。』は、かつて「神聖かまってちゃん」のマネージメントを担当していた、漫画家でベーシスト・劔樹人の自伝的青春コミックエッセイが原作。若葉とは『愛がなんだ』やドラマ『有村架純の撮休』第2話(WOWOW)でも組んだ今泉力哉が監督を務め、松坂桃李を主演に、アイドルオタクたちの熱が炸裂する中学10年生的青春ムービーだ。
想いのアンバランスさをすくうことに長けた今泉監督だが、本作では究極の一方通行を見つめる。仲間とともにアイドルへ愛を注ぐオタクたちの絆が愛おしく、「好き」を貫く強さが眩しい。とにかく6人組のアンサンブルが素晴らしく、西野を演じる若葉はどこか可愛らしさを感じさせる。
一方通行な愛をあっぱれな青春に昇華させた『あの頃。』に対し、今泉監督の真骨頂である「想いのアンバランスさ」を、下北沢という街を舞台に見せるのが『街の上で』。『ゾッキ』が公開中の漫画家・大橋裕之との共同脚本作であり、心地よい会話劇が続く。意外なことに若葉にとって、これが初主演映画。浮気をした上に、自分を振った元カノへの思いを引きずる、古着屋で働く青年・荒川青を絶妙な温度感を伴って見せる。青は幾人かの女性たちと出会うが、関西弁のイハの自宅シーンでの程よい緊張感が特にたまらない。
大きな事件が起きるわけではなく、ささやかな日常をすくう本作は、だからこそ下北沢という街の雰囲気や、登場人物たちの「想い」の揺れが伝わってくる。本作には自主映画にまつわるエピソードが絡んでくるが、下北沢映画祭からのオファーからスタートした本作自体に、どこか自主映画のようなにおいが漂うのもいい。そしてそんな空気に、若葉はとてもよく似合う。