『生きるとか死ぬとか父親とか』は“娘版『俺の家の話』”? リアルベースの人間ドラマに期待

『生きるとか~』は“娘版『俺の家の話』”?

 『生きるとか死ぬとか父親とか』に出てくるのは父ひとり娘ひとりだけの家族だが、そのテーマにおいては懐かしの向田邦子ドラマの匂いがする。それは元祖“独身のカリスマ”ともいえる向田から現代の女性に引き継がれた何かがあるからかもしれない。

 子供の立場から考えてみると、実質的な親の介護が始まるのが50代だとすると、介護が必要なほど弱った状態の親を責めることはしづらい。また、親は認知症になって既に過去のことを忘れているかもしれない。それならば“介護前夜”である40代のうちは、子供として接することのできる最後のチャンス。『俺の家の話』の寿一のように、自分の幼少期に世話をしてくれず一度も褒めてくれたことのなかった父親を責めることもできるだろうし、または、同作の舞のように、父親が浮気し母親を悲しませていたと反省を促すこともできるだろう。もし、それをぶつけて親との確執をなくせるのなら、その後の人生はきっと生きやすくなる。

 『生きるとか死ぬとか父親とか』ではそんなアラフォーのリアルを映画監督の山戸結希(『ホットギミック ガールミーツボーイ』など)が演出するのも注目ポイントだ(第3話~第8話は菊地健雄が演出)。これまで主に思春期の少女たちの痛みを描いてきた山戸監督だけに、そこから何周もしたような中年女性の悲喜こもごもを描けるか。だが、よく考えてみると、女性が娘でいられる最後の時期が舞台なのだから、山戸監督にはうってつけなのかもしれない。

 豪華キャストによるラブコメも、定番の推理ものなども楽しいけれど、現実感に欠け、共感はしづらい。やはり、こんなふうに地に足の着いた、それでいて重すぎないヒューマンドラマもあってほしい。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
テレビ東京系にて、4月9日(金)スタート 毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00〜放送(1話・2話は深夜0:05〜放送)
原作:ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社刊)
主演:吉田羊、國村隼、田中みな実、松岡茉優、富田靖子、DJ松永(Creepy Nuts)、オカモト“MOBY”タクヤ(SCOOBIE DO)、森本晋太郎(トンツカタン)、ヒコロヒー
オープニングテーマ:高橋優「ever since」(unBORDE / Warner Music Japan)
監督:山戸結希、菊地健雄
シリーズ構成:山戸結希
脚本:井土紀州
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:佐久間宣行(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、半田健(オフィスアッシュ)、平林勉(AOI Pro.)
制作:テレビ東京、オフィスアッシュ
製作著作:生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会
(c)「生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/ikirutoka/
公式Twitter:@tx_ikirutoka

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