水川あさみ×山田真歩に惹かれずにはいられない 『ナイルパーチの女子会』が描く恐怖と共感

 栄利子自身もそのことに気づいている。栄利子が翔子を半ば脅迫して無理やり旅行しているときに、ナイルパーチは外来種は人間に(無理やり放流されて)競争させられてきたけれど、女性も同じで、女性たちに団結されると困る男性社会によって、競争させられたのだと説く。

 「女はおろかで協力できない生き物だって刷り込まれてきた」「なんとかして他の女とは違う人間になって、男たちに認められたい、対等になりたいって思ってきた」と栄利子が翔子に語るシーンは視聴者として共感できるものがあった。だが、翔子には「言ってることはわかるけど、すごく意識高いんだね」と言われてしまうシーンを見てはっとさせらるものがあった。

 栄利子が翔子にしてきたことは、恐怖すら感じるほどのことであるから、この言葉にどんなに真実味があっても、簡単には乗っかることはできない。また、栄利子のような立場ではない人にとっては、すごく遠い言葉なのかもしれない。そして、人が簡単に分かり合えたり、共感できるということは、理想であり、実際には難しいことなのかもしれないと気づかされる。

 2021年になり、シスターフッドを描いた作品も多くなってきた。そういうものに勇気づけられる面も多かったが、『ナイルパーチの女子会』には、正直、痛みと恐怖がある。観ていて、他人事とは思えない部分も多く、自分自身も削られるような部分もある。冒頭で栄利子と翔子が自転車に2人乗りをしているシーンについて書いたが、それも北野武監督作『キッズ・リターン』や現在公開中の映画『あのこは貴族』の2人乗りとはまるで異なる意味となっている。それだけに、一体この作品がどこに向かうのだろうと思えてくる。

 第6話、第7話では、翔子もまた栄利子のように、連絡がつかない憧れの主婦ブロガーに執着を始めそうになっているシーンが描かれる。誰でも、同じような過ちを起こすということが示唆されていることで、悲しい方向性ではあるが、翔子と栄利子が近づいているようにも思えてしまった。

 柚木麻子の作品は、テレビドラマ・映画化された『伊藤くん A to E』を観ても、女性たちが、社会の中でしなくてもいい競争をさせられている痛々しい状況を突き放して描き、そこを乗り越えたところに光が見えるものも多い。『ナイルパーチの女子会』も、栄利子が翔子が、どのようなところに行きつくのか、最後まで見守りたいと思わせられた。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
土曜ドラマ9『ナイルパーチの女子会』
BSテレ東、BSテレ東4Kにて、毎週土曜21:00~21:55放送
出演:水川あさみ、山田真歩ほか
原作:柚木麻子『ナイルパーチの女子会』(文春文庫)
監督:瀧悠輔
脚本:横田理恵、綿種アヤ
主題歌:ロザリーナ「涙の銀河」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
プロデューサー:戸石紀子(テレビ東京)、田中美幸(C&Iエンタテインメント)
制作:BSテレ東/C&Iエンタテインメント
制作協力:ドラゴンフライエンタテインメント
製作著作:「ナイルパーチの女子会」製作委員会2021
(c)「ナイルパーチの女子会」製作委員会2021
公式サイト:https://www.bs-tvtokyo.co.jp/nileperch/
公式Twitter:https://twitter.com/BS7_nileperch

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