「ぬいぐるみかよ!」の衝撃や賛否を吹き飛ばす 『おじさまと猫』が伝える“愛すること”

 さて、ドラマの冒頭で「誰かに愛されたかった、おじさまと猫の心温まる日々を描いた物語」と語られる通り、これは「愛」のドラマだ。愛を欲していたおじさまと猫は、愛を注がれたことで、愛を与える側になる。さらに、物語は、人と猫だけでなく、周囲の人々(と猫)も巻き込みながら展開していく。

 第7話からは“ふくまる”の姉の“マリン”(声:松本穂香)が登場し、その飼い主となる、神田にコンプレックスを抱いてきたピアニストの日比野(平山浩行)も登場。おじさまとふくまるの周囲が、さらに豊かになっていく。3月3日深夜放送の第9話では、今では音楽教室で子どもたちにピアノを教えている神田が、ある理由から辞表を提出しようとして周囲から引き止められる。そして親友の小林(升毅)は、あるピンチに陥った神田から「助けてほしい」と言われて「嬉しい。もっと頼ってくれ」と笑顔を見せる。さらにこのあと小林の言葉が続く。

 妻を亡くして孤独になり、ステージにも立てなくなった神田は、大切なものをいくつも失い、空っぽな状態で佇んでいたのだと思っていた。しかし逆だったのかもしれない。多くの経験をするうちに、心に抱え込んだ荷物が増えていき、その重さで神田は歩けなくなっていた。人であれ動物であれ、誰かへ向けられた愛情、思いやりは、互いの荷物を持ち合いながら、ともに歩くパワーとなる。ここでの会話は、荷物が多ければ多い人ほど、響くに違いない。そして自分自身も、きっと愛情を与える側に、支える側にもなれると教えてくれる。

 本ドラマは全12話、つまり第9話を含めてあと4回。まだ原作は連載中だが、ここまでドラマは原作に沿って作られており、このままいくと、最大の事件が待っている!? 攻めの手段を取りながら、真正面から「愛すること」を描いてきた『おじさまと猫』。「愛」などと、大仰でこっぱずかしい言葉が、自然と入ってくるのは、“ふくまる”を介しているからかもしれない。いまやこの“ふくまる”と“おじさま”でしか考えられない。ラストがどう終わるのかは分からないが、愛溢れるこの世界に、とことん浸らせていただこう。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送・配信情報
ドラマParavi『おじさまと猫』
テレビ東京、テレビ大阪にて、毎週水曜深夜0:58~放送
テレビ愛知にて、毎週水曜深夜2:05~放送
テレビ北海道にて、毎週日曜深夜1:35~放送
びわ湖放送にて、毎週土曜深夜0:00~放送
※BSテレ東でも放送予定
動画配信サービス「Paravi」にて、各話放送前週水曜21:00より独占先行配信
出演:草刈正雄、小関裕太、武田玲奈、平山浩行、高橋ひとみ、升毅 
声の出演:神木隆之介、松本穂香 
脚本:ふじきみつ彦、伊達さん(大人のカフェ)
監督:椿本慶次郎、副島正寛
オープニングテーマ:吉澤嘉代子「刺繍」(ビクターエンタテインメント)
エンディングテーマ:阿部真央「ふたりで居れば」(ポニーキャニオン)
原作:桜井海『おじさまと猫』(ガンガンpixiv/月刊『少年ガンガン』スクウェア・エニックス刊)
チーフプロデューサー:山鹿達也(テレビ東京)
プロデューサー:濱谷晃一(テレビ東京)、田中智子(テレビ東京)、櫻井雄一(ソケット)、山邊博文(ソケット)
制作:テレビ東京、ソケット
製作著作:「おじさまと猫」製作委員会
(c)「おじさまと猫」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/ozineko/
公式Twitter: https://twitter.com/tx_ozineko
公式Instagram:https://twitter.com/tx_ozineko

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