エリサ・ラム事件の真相に迫る いまこそ観るべき『事件現場から:セシルホテル失踪事件』
2013年、インターネット上で、ある奇妙な動画が世界中に拡散し、話題を呼ぶことになった。それは、ホテルのエレベーター内に設置された防犯カメラによる映像で、映っているのは一人の若いアジア系女性の宿泊客。この動画が注目を浴びたのは、周囲に誰もいないように見えるのに、誰かと話しているような身振りをしたり、手をひらひらと動かしたり、エレベーターのボタンを次々に押したりと、女性が奇妙な行動を続けるからだ。そして、この一連の行動をとらえた動画は、彼女の姿を写した最後の映像なのだという。
ロサンゼルスのダウンタウン、サウス・メイン・ストリートに実在し、現在は閉鎖されている“セシルホテル”。そこは、過去に様々な凶悪事件が起こった場所であり、2013年にエレベーターの動画と不可解な状況が大きな話題となった「エリサ・ラム事件」が発生した場所でもある。Netflixで配信されている全4回のシリーズ『事件現場から:セシルホテル失踪事件』は、その奇妙な事件の全容を解明していくドキュメンタリー作品だ。
ホテルから提供された防犯カメラの映像を、警察が情報を募る意味で公開した、問題のエレベーター動画は、当時私も拡散されたものを目にしたくらいなので、とにかく広く見られていたのは確かだろう。深刻なのは、彼女エリサ・ラムがホテルから出た映像が見つけられなかったこと。つまり、彼女はまだホテルの中にいる可能性が高く、何らかの事件に巻き込まれたのではないかと考えられるのだ。だが、警察によるホテルの捜索では彼女を発見することはできなかった……。
それからしばらく経って、セシルホテルの宿泊客たちが、部屋の水道の水が濁っていて変な匂いや味がすると、うったえ始める。苦情を受けて、ホテルの管理者が屋上の貯水タンクを確認すると、その水の中に、遺体となったエリサ・ラムがいたのである。
この事態により、事件はよりセンセーショナルなものとして報じられ、例の動画もさらなる注目を集めることになった。多くのネットユーザーが、繰り返しエレベーター動画を検証し、独自の推理を述べたり、盛んに情報交換がなされるようにもなる。果たして、エリサ・ラムの身に何が起こったのか……? この事件は、多くの人々の関心を集め、一時はニコラス・ウィンディング・レフン監督によって映画化が検討されるほどだった。