Netflix、韓国作品に巨額投資 オリジナル映画や人気作の続編など新作ラインナップも発表

 2月25日、Netflixが韓国にてオンライン記者会見「See What’s Next Korea 2021」を開催した。2016年から韓国でもローンチしたNetflix。そこから世界へ名を馳せていった人気コンテンツを振り返るととも、これからさらなる躍進を遂げることが約束された本記者会見。2021年には韓国発の作品に約5500億ウォン(約520億円)もの投資を発表するとともに、全世界に向けた注目の新作ラインナップの発表、および作品のクリエイターを招いたパネルが開かれた。

世界がいま、韓国産コンテンツを待ち侘びている

 イベントは、共同最高経営責任者兼最高コンテンツ責任者テッド・サランドスからのビデオレターから幕を開ける。「この数年、世界中の人々がNetflixで韓国の素晴らしい作品に夢中になりました。『キングダム』のゾンビに追われ、『BLACKPINK~ライトアップ・ザ・スカイ~』で一緒に踊り、『人間レッスン』で若者が置かれている現実と向き合い、『愛の不時着』ではカップルの誕生を見守りました。こうした物語の中心にあったのが、韓国です。Netflixでは2016年から2020年の間に7,700億ウォン以上(約7億ドル・約730億円)を韓国発の作品に投資し、これまでに約80本の作品を全世界に配信しています。いまでは韓国作品がグローバルエンターテインメントのトレンドとして定着していることを実感します。世界中のエンターテインメントを愛する人々が一緒に笑ったり、泣いたり、楽しさを見つけられる作品を、今後も韓国で製作していきます」

Netflixコンテンツ部門バイス・プレジデントのキム・ミニョン

 その後、Netflixコンテンツ部門バイス・プレジデント(韓国、東南アジア、オセアニア圏)のキム・ミニョンが登壇。2016年、『新感染ファイナル・エクスプレス』が世界的に大ヒットした年であり、韓国でNetflixのサービスが始まった年から今日にかけて振り返る。

 「Netflixが韓国でサービスを開始する以前から、韓国のコンテンツは世界レベルに位置づけられていました。Netflixの役割は、自由度の高いクリエイティブな環境で手がけられた韓国作品の特別な魅力を、時差や言語の制約を越えて、より多くの国のメンバーにより手軽に楽しんでいだける後押しをすることです。2020年末には、韓国では380万世帯以上がNetflixを視聴しています。今後もますます韓国とともに成長することを目指し、2021年には約5,500億ウォン(約5億ドル・約520億円)を韓国コンテンツに投資することで、アクション、スリラー、SF、スタンドアップコメディ、シットコム(シチュエーション・コメディ)など、様々なジャンルを網羅した韓国作品を数多く提供します。韓国の優れたクリエイターとともに、韓国の映像産業を一層盛り上げることに貢献してまいります」と、今後も韓国クリエイターとオリジナルコンテンツを作ることを発表。

Netflixコンテンツ部門バイス・プレジデントのキム・ミニョン

 また、目覚ましい躍進を遂げる中でも初心を忘れずに謙虚さを心がけ、国籍や文化、年齢、ジェンダー、ライフスタイル問わず全世界の視聴者に向けて韓国コンテンツを発信していく、と強調したミニョンだった。

韓国作品の世界発信とNetflixと共に働くことについて

 その後、パネルディスカッションに『キングダム』の脚本家キム・ウニと『人間レッスン』のプロデューサーであるユン・シネが登壇。Netflixとのコラボレーションで感じたクリエイティブの自由度と作品の海外展開についての経験を語った。

 キム・ウニは「『キングダム』はゾンビという馴染みのない素材、そして李氏朝鮮という背景によって制作費が上がる懸念から、心にしまっておいた作品でした。しかし、Netflixが韓国でサービス展開すると聞き、Netflixと一緒なら製作できるかもしれないと期待を抱きました。私の手がけた他の作品『シグナル』の後に動き出したのですが、Netflixは私の懸念点などおかまいなく、『イエス』と言ってくれたのです。製作期間中、Netflixにクリエイターの意図や自由を尊重していただいたことで、作品の完成度をさらに高めることができました」と述べた。

キム・ウニ

 「『キングダム』はNetflixがなければ日の目を見ることのないプロジェクトだっただろう」と語るキム・ウニに重ねて、同じく人気シリーズとして知られる『人間レッスン』のプロデューサー、ユン・シネも、Netflixとの仕事について話した。「脚本を受け取った時から、これを映像化したいと思う一心で、それを叶えてくれるのがNetflixしかいないと確信していました。もちろん、すぐにゴーサインを出すことは彼らにだって難しかったはずですが、それでも『やりましょう』と言ってもらえました」

 モデレーターに「Netflixとともに働いている中で、クリエイターとしてリスペクトされていると感じた瞬間はあるか」と聞かれ、二人は答えた。「最初からミーティングは基本英語でします。私はあまり英語が得意ではないので韓国語で参加するのですが、Netflix側からは絶対『NO』という言葉を聞きませんでした。私たちの出したアイデアを否定せず、次にどんな展開になるのかということを常に知りたがっていたのです。また、私にとって『キングダム』は題材が少し韓国すぎる作品だと思っていて、それがグローバルに受け入れられるのか不安に思っていたこともありました。しかし、そう感じる必要はなかったようです」と語るキム・ウニ。

ユン・シネ

 プロデューサーであるユン・シネも、大きなリスペクトを感じたと言う。「『人間レッスン』は、その扱う内容からして悪い風に捉えられる可能性のある作品です。しかし、鮮明に覚えているのはNetflixとの初めてのミーティングで、最初に投げかけられた質問『どうしてこの物語を伝えたいと思っているのか。何を観客に訴えたいのか』です。それから私も心を開いて作品の細かなアイデアを彼らの共有していくようになり、そのプロセスがあったからこうして物語を観客に伝えることができたのだと思います。その時のミーティングからNetflix側を含めたチームで誠実な作品作りができたことで、国境を越えて私たちが手がけた物語が理解され、共感を呼んでいることを、大変嬉しく、有難いことだと感じます。これほどに多くの海外ファンとメディアの評価を受けるのは初めての体験です。斬新で面白い物語は国境を越え、世界中の人々から愛されるということを確信しました」と述べた。

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