そしてみんなプロレスを始めた 親の介護を家族総出演のイベントとして描く『俺の家の話』

 プロレスと能楽と介護を題材にしている『俺の家の話』。三題噺のように、一見、まったく結びつかない3つの要素をリンクさせていくところが脚本家・宮藤官九郎の真骨頂だが、2月5日放送の第3話では、さらにそのリンクがクリアに打ち出された。

 プロレスラーを引退して実家に戻り、老いた父親の介護をしながら家業の能楽師になろうとした観山寿一(長瀬智也)。だが、お金に困り、ファイトマネー欲しさにプロレスの試合に出たところ、その間、家でひとりになった父・寿三郎(西田敏行)が転倒して病院に運ばれてしまう。「介護に“まさか”はないんです」とヘルパーのさくら(戸田恵梨香)に叱られてしまった寿一だが、結局、プロレスに復帰することにする。寿三郎をはじめ、妹や弟、父の一番弟子である寿限無(桐谷健太)、さくらにも知らせず、ヒールの「スーパー世阿弥マシン」として再デビューを果たしたのだ。

 この回はプロレスネタが満載で、第1話から出演してきた長州力に加え、武藤敬司と蝶野正洋がそろい踏み。3人が観山家の居間にどっかりと座り、思わず寿一が「顔面圧がすごい!」とビビるほどの迫力だった。長州力の「切れてねぇじゃねぇか」、蝶野の「やるのかやんねぇのか」、武藤の「お前の“プロレスLOVE”はこんなものか」と決めゼリフも次々に繰り出され、台本を書いたクドカンも、そのセリフを言う彼らも、言われたプロレスファンの長瀬も、全員が楽しそうなシーンだった(演出は大変だったかもしれない)。そもそも筋書きありきの試合運びをするのがプロレスなのだから、偉大なプロレスラーはみな役者の素質があるわけだ。

 そして、能を特訓中の寿一が再デビューしたことによって、プロレスと能がコラボし始める。「スーパー世阿弥マシン」の登場音楽は笛とお囃子、「万媚」という女の面をつけ白装束と白足袋で現われる。装束には能に関わる言葉がたくさん書き込まれ、中の赤いシャツには大きく「初心」の文字。これは能の大成者である世阿弥の有名な言葉「初心忘るべからず」を表しているのだろう。スーパー世阿弥マシンは能面を取って赤いマスク姿になると無敵となり、空中殺法などのダイナミックな必殺技を繰り出す。対戦相手の脛に噛みつく“すねかじり”な「親不孝固め」という技もあり、やりたい放題だ。それらのファイトシーンを演じる長瀬智也の身体能力もすごすぎた。

 後半では、寿三郎がさくらと共に偶然、スーパー世阿弥マシンが出る試合を観戦した。そのとき寿三郎が言ったように、万媚は他人に媚びを売る女性を表すことが多いようなので、男性の寿一がどういう意味を込めてプロレスの場でその面をつけたのかは謎だ。試合中、「立てーっ! 世阿弥マシン」と大きな声で叫んだ寿三郎は、覆面のレスラーが息子だと気付いたのだろうか。自宅に戻ってから、寿一に「ものすごい体幹の強いレスラーがいた。能やればいいのになぁ」と言ったのは、とぼけてなのか分かっていてなのか。そこで、能の稽古ではいまだに寿三郎から褒めてもらったことのない寿一が、間接的にほめられて微笑む様子が印象的だった。

 一方、さくらは、これまで3人の老人の介護をして彼らの遺産を受け取ってきたと、観山家の面々にもバレてしまったが、その告白を寿三郎は忘れ、さくらは自分の婚約者だと勘違いしたまま。「さくらに全財産を譲る」と書いた遺言状を何通も用意する。寿一たちに「遺産目当てじゃない」と明言したさくらは困るが、寿一は「親父にはあんたが必要なんだ。もう少し婚約者のふりをしてくれ」と頼み込む。そこで、さくらはその芝居を引き受ける代わりに月額3万円を払ってもらうことを提案するが、寿一は「ファイトマネーですよね?」と快諾。ここにもプロレスラーならではの感覚が生きている。