ファーストサマーウイカ、役者としてもブレイク間近? 抜きん出た自己プロデュース力
『おちょやん』でウイカが演じているミカ本田は、監督のジョージ本田(川島潤哉)の妻で、ハリウッド帰りの女優という役どころ。初登場シーンでは、千代(杉咲花)のNGをきっかけに撮影スタッフ同士がケンカをする中、派手な毛皮のコートという出で立ちで颯爽と現れた。「またやってるの? ダーリン!」とジョージに声をかけ、ケンカではじき飛ばされた男を軽く一払いし、「ティーしに行こう」と言うジョージにミカは「オーイエー! ハリウッドのチェリーパイが懐かしいわー」と2人で腕を組んで歩き出すという、海外のシットコムのような、いかにも大物女優になりきったユニークさで視聴者に大きなインパクトを与えた。
もはや後はセリフがなくても存在感だけで大物女優の絶妙な味わいを見せるところは、ウイカの技術。千代の憧れのスター女優・高城百合子(井川遥)の代役として登場したり、現場で千代がNGを連発すると、「私、もう待ち疲れたんだけど」と痺れを切らし、ワガママな雰囲気を出したかと思えば、千代が感動的な演技を見せると、「よくやったわね」と言わんばかりの笑みを見せる。この大物女優になりきった高飛車な笑みが、視聴者を若干イラッとさせながらも思わず笑わせる。なんとも憎めないキャラクターに仕上がっており、ウイカは朝ドラでも、コメディリリーフとしての使命をきっちりと果たしていると言える。同世代の女優が数多く出演している中で、誰もが一目で大物女優と分かるなりきりぶりは、バラエティで築いたイメージなど、これまでのキャリアがあるからこそできる、ウイカならではの役だ。
ウイカもまた、関西の小劇団でコツコツと下積みを経験し、30歳にして朝ドラ出演に辿り着いたという意味で、千代に負けない波乱万丈の人生であり、彼女がよく口にする“人生の伏線回収”とも言える。
公式Twitterの動画コメントでは「大阪で作る“朝ドラ”に出たいというのは、舞台女優を始めた18歳の頃からの夢だったので、やっとここにたどり着いたと思うと感無量でした」と語り、「ただ、ミカは標準語だったんですね」と、自慢の関西弁を使うキャラではなかったという見事なオチも彼女ならでは。場の空気を一気に面白くするスター性があると思えば、周りを活かして作品の世界観に溶け込むこともできる器用な女優だと、『おちょやん』で改めて感じさせた。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/