松下洸平は“水”のような俳優だ 大ブレイクの前にあった舞台での積み重ね

 松下洸平は“水”のような俳優だと思う。

 強い味やクセはないが、どんな場所にも絶対に必要な存在。さまざまな作品に自然に溶け込み、必ず丁寧な芝居を見せる。水がすべての食事に合い、どんな料理にも必要なように。

 また、相手役との関係が深く緻密に描かれている時ほどその魅力を倍増させるプレイヤーだとも感じる。たとえば彼の代表作となった『スカーレット』八郎役や、コロナ禍の恋愛を軽妙に描いた『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)の檸檬こと青林風一。『スカーレット』では、妻の喜美子(戸田恵梨香)が陶芸家としての才能を開花させたことに対し、夫としての喜びと、同業者としての嫉妬という相反する感情を痛いほど丁寧に紡ぎ、『#リモラブ』では、オンラインで始まった恋愛を不器用に進める30代ビジネスマンをコミカルかつ繊細に演じていた。

 現在放送中の『知ってるワイフ』で松下が担う津山は主人公の同僚という役どころ。元春が気兼ねなく家庭の愚痴をこぼせる存在だ。オリジナルの韓国版が1話72分程度なのに対し、日本版は1話46分ということもあり、津山のシーンが少ないのは寂しいところだが、八郎や青林、『MIU404』(TBS系)の“逃げる男”加々見崇とは一味違ったニュートラルな人物像を、松下がどう膨らませていくのかも今後の注目ポイント。

 そして、先日は『ぐるナイ』(日本テレビ系)「ゴチになります」に新メンバーとしてサプライズ登場。これまで、ドラマ等のプロモーション以外でバラエティ番組に出演する機会がほぼなかった彼が、手練れの中でどんな存在感を放つのか。

 “水”の松下洸平がドラマとバラエティの両面でどう跳ねるか。2021年も新たな“波”を生み出しそうだ。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
木曜劇場『知ってるワイフ』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送 
出演:大倉忠義、広瀬アリス、松下洸平、川栄李奈、森田甘路、末澤誠也(Aぇ!group/ジャニーズJr.)、佐野ひなこ、安藤ニコ、マギー、猫背椿、おかやまはじめ、瀧本美織、生瀬勝久、片平なぎさ
脚本:橋部敦子
編成企画:狩野雄太
プロデュース:貸川聡子
演出:土方政人、山内大典、木村真人
音楽:河野伸
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ

関連記事