『KCIA 南山の部長たち』『野球少女』『藁にもすがる獣たち』など、2021年も韓国映画は粒ぞろい!

『藁にもすがる獣たち』

『藁にもすがる獣たち』(c)2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED. (c)曽根圭介/講談社

 『悪人伝』や『犯罪都市』のチャン・ウォンソクが製作を手掛け、この映画が長編デビューとなるキム・ヨンフンが監督、脚本を手がけた一作。

 大金の入った謎のバッグを見つけるペ・ソンウ演じるジュンマンのシーンから本作は始まる。ホテルのサウナの映像の色味やトーン、音楽の使い方がスタイリッシュで、なおかつ不穏な物語が不穏なままに進んでいく感覚に、韓国オリジナル作品かと思って観ていたが、後になって日本の作家・曽根圭介の同名小説が原作と知って驚いた。

 ジュンマン以外にも、チョン・ウソン演じる公務員だが恋人が残した借金で追われているテヨンや、チョン・ドヨン演じるヨンヒなど、最初はそれぞれがそれぞれの人生を歩んでいた登場人物たちが、徐々に絡まりあっていく様子をドキドキしながら観ていた。

 クライムサスペンスだけに、ネタバレはできないが、徐々に明らかになっていく登場人物の良い意味でも悪い意味でも人間性にくぎ付けになる。

 日本の原作小説は、表紙からしてこの映画のビジュアルとは違ってどこか飄々とした雰囲気がある。日本でもしこの映画を作ったら、俳優は誰だろうと想像したり、まったく違ったトーンの作品になるのではないかと思いながら観るのも面白いかもしれない。

 またジュンマンの母親役として、『チャンシルさんには福が多いね』の大家さん役や、『チャンス商会〜初恋を探して〜』の主人公を演じてきたユン・ヨジョンが出演しているのも見逃せない。

 そのユン・ヨジョンがアメリカ南部の移民家族の祖母スンジャを演じたアメリカ映画『ミナリ』も3月19日から日本で公開の予定である。このほか、少女の視点から家族や友人関係を描いた『夏時間』(あいち国際映画祭で『ハラボジの家』として公開されている)や、オム・ジョンファとパク・ソンフン出演のテロリストにハイジャックされた旅客機を舞台に描くアクションコメディ『ノンストップ』(韓国タイトル訳は『OK! Madam(英題)』)も公開予定。女性を主人公に描いた秀作やコメディにも今年は期待できそうだ。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『KCIA 南山の部長たち』
1月22日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー
監督:ウ・ミンホ
脚本:ウ・ミンホ、イ・ジミン
撮影:キム・ジヨン
音楽:チョ・ヨンウク
原作:金忠植『実録KCIA―「南山と呼ばれた男たち」』(訳:鶴真輔/講談社刊)
出演:イ・ビョンホン、イ・ソンミン、クァク・ドウォン、イ・ヒジュン、キム・ソジン
配給:クロックワークス
2019年/韓国/5.1ch/114分/字幕翻訳:福留 友子/字幕監修:秋月望/英題:The Man Standing Next/PG12
(c)2020 SHOWBOX, HIVE MEDIA CORP AND GEMSTONE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://klockworx-asia.com/kcia/

『藁にもすがる獣たち』
2月19日(金)、シネマート新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本:キム・ヨンフン
製作:チャン・ウォンソク
出演:チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、チョン・マンシク、チン・ギョン、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム、ユン・ヨジョン
原作:曽根圭介『藁にもすがる獣たち』(講談社文庫)
撮影:キム・テソン
編集:ハン・ミヨン
音楽:カン・ネネ
配給:クロックワークス
2020 年/韓国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/109分/韓国語/G/英題:Beasts Clawing at Straws/日本語字幕:福留友子
(c)2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED. (c)曽根圭介/講談社

『野球少女』
3月5日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
監督・脚本:チェ・ユンテ
出演:イ・ジュヨン、イ・ジュニョク、ヨム・ヘラン、ソン・ヨンギュ、クァク・ドンヨン
配給:ロングライド​
2019年/韓国/韓国語/105分/スコープ/5.1ch/英題:Baseball Girl/日本語字幕:根本理恵
(c)2019 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED​
公式サイト:longride.jp/baseballgirl/

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