『KCIA 南山の部長たち』『野球少女』『藁にもすがる獣たち』など、2021年も韓国映画は粒ぞろい!
2020年は『パラサイト 半地下の家族』が注目されたが、今年もたくさんの韓国映画が上映される。その中から、いくつかピックアップして紹介したい。
『KCIA 南山の部長たち』
1月22日から公開の『KCIA 南山の部長たち』は、イ・ビョンホンとチョ・スンウ共演の『インサイダーズ 内部者たち』や、ソン・ガンホ主演のNetflixオリジナル映画『麻薬王』を手がけてきたウ・ミンホの最新作。
舞台は1979年の韓国。朴正煕大統領が中央情報部部長キム・ジェギュに暗殺された実話を描いた同名の原作小説を元に描かれる(日本でも発売されている)。イ・ソンミン演じる大統領や、イ・ビョンホン演じる大統領側近の中央情報部(通称KCIA)部長キム・ギュピョン、そしてかつての友人でもある裏切り者パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)との緊張感あふれる関係性の変化にも興味を惹かれるが、この映画で起こった朴正煕大統領殺害の背景を知れば、より韓国の動きを知ることもできる。
『KCIA 南山の部長たち』は、1980年の光州事件を描いた『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』や、ソン・ガンホ主演で1981年の釜林事件を題材にした『弁護人』、1987年の軍事政権下の韓国を描いた『1987、ある闘いの真実』へとつながっている。その始まりであると思うと、また違った見方もできるだろう。
『野球少女』
3月5日からは『野球少女』が公開となる。本作は、『梨泰院クラス』のタンバムの料理長、マ・ヒョニ役を演じたイ・ジュヨンが主演。最高球速134キロを投げる天才で、高校卒業後に女性のリーグではなく、プロ野球の選手になることを夢見ているチュ・スインを演じる。
以前、ある人が「女性を特別にあがめてもいけないし、さげすんでもいけない」と言っていたのを聞いてずっと頭に残っている。スインのように、プロ野球選手になりたい女性がいれば、体格差などもあり、同じ条件ではない中で頑張っているということで、よかれと思って、下駄をはかせて、温情をかけてしまうこともあるだろうし、反対に、女性だからといって、最初から無理と実力をジャッジもせずに門前払いをしてしまうこともあるだろう。
この映画には、そうした女性が知らず知らずに社会から受けてきた出来事のリアリティが描かれているし、スインが、そんな扱われ方に対して、ぶれない気持ちを見せるところにはっとさせられた。