すべての“敗者”に捧げるドキュメンタリー 『らいか ろりん すとん』が突きつけるコロナ禍の現実

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、早く横浜に戻ってこいと伝えたい、石井琢朗選手を永遠のアイドルとする石井が『らいか ろりん すとん -IDOL AUDiTiON-』をプッシュします。

『らいか ろりん すとん -IDOL AUDiTiON-』

 2019年1月『世界でいちばん悲しいオーディション』、2019年11月『IDOL-あゝ無情-』に続く、芸能事務所WACKのオーディションドキュメンタリー第3弾となるのが、『らいか ろりん すとん -IDOL AUDiTiON-』。

 第1弾ではWACKオーディションとはどんなものなのかを、第2弾ではオーディション候補生というよりも解散してしまった第2期BiSの物語が、それぞれ描かれていました。過去2作は、“知られざる裏側を知ることができる”という、いわゆる“バックステージ”ものの面白さが詰め込まれていました。本作もその要素は残っているのですが、過去2作以上に「WACKを知らない」「アイドルに興味がない」という人が観ても、楽しめる1作になっていると感じました。

 本作の中心となるのは、ポスタービジュアルにも描かれている、ワキワキワッキー、インポッシブル・マイカの2名。ドキュメンタリーでありながら(ドキュメンタリーにも脚本があるとはいえ)、まるで誰かがこの2人を主役とした物語を用意していたかのように、友情、努力、勝利(敗北)、そして……という展開が描かれていきます。

 ニコニコ生放送でこの合宿が放送されていたこと、オフィシャルにも発表されているのでネタバレをしてしまいますが、オーディションの結果、ワキワキワッキーが唯一合格を勝ち取ります。その後、WAggのユウドット・comとして活動を続けるも脱退。厳しい戦いを勝ち抜き合格、その後スターとして確実に成長……というのが“定番”の物語であり、無意識的にも観客が期待している展開かもしれません。しかし、本作はそうはさせてくれず、容赦なくエンタメ界で生き抜くことの厳しさ、現在進行中のコロナ禍による理不尽な現実を突きつけてきます。

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