千代と千鳥に共通する過去が明らかに 『おちょやん』男性中心の社会で生きる女性の足跡

千代と千鳥に共通する過去が明らかに 『おちょやん』男性中心の社会で生きる女性の足跡

 座長の千鳥(若村麻由美)が了承し、山村千鳥一座は『正チャンの冒険』の舞台稽古に入った。千鳥抜きの稽古は物が飛び交うこともなく、いつもとは違うなごやかな雰囲気に包まれる。千代(杉咲花)も台詞を忘れた出演者に助け舟を出すなど、機転と台詞覚えの良さを遺憾なく発揮していた。

 『おちょやん』(NHK総合)第27回。千鳥は千代に「千秋楽まで来なくていい」と口にする。稽古をしながら身の回りの世話もする千代への気遣いだった。「大事おまへん」と答える千代に、千鳥は「他の人からどう思われようと、あなただけはあなたの役を愛しなさい」と伝える。

 千代と千鳥の関係は独特だ。横暴さに耐えかねて一度は千鳥の元を去った千代だが、千鳥が清子(映美くらら)たち座員のために場所を作り、陰で人一倍努力していることを知って世話係を再志願。言いつけられた仕事もパーフェクトにこなせるようになって、ようやく千鳥と一対一で向かい合うことができた。

 以前聞いた話が忘れられず、初めて得た役を尋ねる千代に千鳥は言葉を濁す。「なんで役者になろて思いはったんだす? 自分の内側から『そうせえ』て声が聞こえたんだすか?」と矢継ぎ早の質問に千鳥は面食らうが「大嫌い」という高城百合子(井川遥)の名前を聞いて、自分が女優になったきっかけを話し出すのだった。

 千鳥の母親は政治家の妾で、その母に「役に立つから」と言われて子どもの頃から芸事や武術を習わされた。結婚したが、夫や姑は「具合の悪い祖父の面倒を見る人間が欲しかっただけ」。そのうち夫に愛人ができ、居場所がなくなった千鳥は家を飛び出した。「私が役者になった理由はただ一つ、まったく別の自分に生まれ変わって、私を見下した世の中を見返してやるため」と千鳥は語る。

 千鳥は千代に理解してもらおうとは少しも思っていなかったはずで「彼女(百合子)が太陽なら、さしずめ私は夜の暗闇ね」と不敵に言い放つ。が、意外にもその話を聞いて千代は涙ぐんだ。「うちも昔おんなじような目に遭うて」というのは、テルヲ(トータス松本)が栗子(宮澤エマ)を後妻に迎えたことで、家を出なくてはならなかったことを指しているのだろう。

 女性であるというだけで様々なものを押し付けられ、あげく夫に裏切られた千鳥は、自分自身であるために女優という仕事を選び取った。自分が苦労してきたからこそ、同じように苦労した女性を受け入れる。女優として誰にも頼らず自分の力だけで生きてきた点で千鳥と百合子は似た者同士だが、千代もそうだと知って、千鳥は内心驚いたのではないだろうか?

 大正から昭和のこの時代、女性の社会的地位は低く、役者の地位も今ほど高くなかった。千鳥の話からは、女性が自立して生きることが、男性中心の社会で性別によって求められる役割を果たす従来の価値観とはまったく違うものであったことがわかる。理不尽に耐えた先に見たのは、自分と同じように苦労して道を開いてきた先人の足跡であり、それは千代がこれから歩んでいく道を指し示していた。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる