『ニジガク』はなぜ“同好会”を描いたのか? 『ゆるキャン△』に共通する“個の尊重”
そのアニメとは『ゆるキャン△』のこと。2021年1月には待望の第2期が放送される、あfろ氏の漫画を原作とした人気アニメであり、『ニジガク』と同じく田中仁氏がシリーズ構成を務める作品でもある。
『ゆるキャン△』ではひとりで楽しむキャンプ、“ソロキャンプ”を趣味とするちょっとクールな少女・志摩リンが、天真爛漫な少女・各務原なでしことの出会いを経て、少しずつ変わっていく様子が描かれる。
なでしこは“野外活動サークル”に入部すると、サークル仲間と一緒に行くキャンプにリンも誘う。しかしこれに拒否感を示したリンを見るやなでしこは、リンにはリンのキャンプの楽しみ方があるのだと察する。一方、当初はそんな様子のリンだったが、なでしこと親しくなるにつれ、彼女の誰とでも打ち解ける性格や、サークル仲間たちへの理解を深め、みんなで一緒に楽しむキャンプもやってみたいと思うようになる。
その上で、こうした展開によってどちらかのスタンスにただ寄って行くわけではないのが『ゆるキャン△』の素晴らしいところだろう。互いに影響を受け合ったふたりがその後、どのように感じるようになるかは、先日公開された第2期の予告映像にもよく現れている。
“みんなでいる楽しさ”を知ったリンは、改めて“ソロキャンプだからこその楽しさ”を再認識する。“みんなで楽しみたい”と思っていたなでしこもまた、リンの影響を受け、“ひとりでキャンプをする楽しさ”に興味を持つ。これがキャッチコピーの「さみしいも、たのしい。」に繋がるのだ。
人との関わりによって見える世界が広がることは、新たな世界に触れる切っ掛けにも、自分が元々持っていたものの素晴らしさを再認識することにも繋がる。『ニジガク』や『ゆるキャン△』は通底する“個の尊重”という価値観のもと、その両方の素晴らしさを見事に描く。
それぞれが違う感性を持つ人間だ、と認め合う。つまり「根本的には分かり合えない」と認めることで、初めて歩み寄れる、尊重し合えるということは、現実の対人関係においても当てはまる話ではないだろうか。他者への無理解や不寛容が、SNSなどを通じて以前にも増して可視化されている昨今。こういった作品が提示する価値観から受け取れるものは、決して少なくないはずだ。
■小林白菜
ゲームやアニメーション、漫画などを中心に、作品の魅力について紹介する記事を複数のメディアに寄稿。アニメーションでは『プリキュア』シリーズや『アイカツ!』シリーズなど、女児向けの作品を特に好んでいる。note/Twitter