渋谷天外、若葉竜也、阿部純子が杉咲花を見守る 『おちょやん』ヒロインを取り巻く人々
鶴亀撮影所の大部屋女優となった千代(杉咲花)だが、前途多難なスタートを切ることに。NHKの連続テレビ小説『おちょやん』が第7週初日を迎え、右も左もわからない千代を支える登場人物たちの優しさが目を引く回となった。
映画女優の卵として動き始めた千代だが、大部屋女優たちは所長(六角精児)の口利きで撮影所に入った千代を気に入らない様子。「新人は誰よりも早く来て部屋の掃除するのが当たり前でしょ」と千代を怒鳴りつけ、撮影に少し遅れたぐらいどうってことないと雑用を押し付ける。読み合わせに参加できなかった千代は、撮影現場でまたしても大目玉を食らってしまった。活動写真の現場は舞台の裏側とは勝手が違う。懸命に励むものの空回り気味な千代を見ていると、かなりハラハラする。
だが、物語全体が不安でいっぱいにならないのは、千代の周りの人々の何気ない優しさが安心感を与えてくれるからだ。
物語冒頭では、集合時間ぴったりにやってきた何も知らない千代に、守衛の守屋(渋谷天外)が「そんなことよりはよ行かないかんのちゃうか」と声をかける。撮影所の門をくぐる数多くの女優を見続けてきた彼だからこそ、先輩たちによる厳しい洗礼を知っていたように思える。彼らのやりとりは、千代の女優としての在り方に直接関わることはないかもしれないが、見ていて微笑ましくホッとするものがある。
助監督・小暮(若葉竜也)は、読み合わせに参加しなかった千代を叱責するのではなく、「これからはちゃんと読み合わせには出た方がいいね」と諭した。彼が千代を気遣うのは、彼自身も助監督としてスタッフの理不尽な要求に答えているからだろうか。小暮は決して感情的なキャラクターではないため表情の起伏はやや少なく感じられるが、若葉の演技は、助監督としての気苦労だけでなく、活動写真づくりに向き合う熱量も感じさせてくれる。「いい芝居をして自分の実力を認めさせるしかないんじゃないかな」と伝えた時、彼は千代に体を向き直し、彼女をまっすぐ捉えた上で、言葉を一つ一つ丁寧に発していた。作品づくりに対する彼の真摯さは、千代に良い影響を与えるはずだ。
洋子(阿部純子)の優しさにも心惹かれるものがあった。名前のある役を得たい千代に、京子(めがね)や真理(吉川愛)が「そんな簡単に貰えるわけない」と笑う中、洋子だけは真剣な眼差しで「どんな目立たん役でも絶対に手ぇ抜かへんことや」とアドバイスする。「ちゃんとやってたら必ず誰かが見てくれる」という彼女の言葉は、千代に嫌がらせをした大部屋女優の「どうせうちらワンサ(エキストラ)なんやから」という姿勢とは大違いである。洋子に励まされた千代の心意気が実を結ぶ予感がする。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/