伊藤沙莉、『いいね!光源氏くん』など八面六臂の2020年 深さとフラットさを併せ持つ女優に

 ここ数年、実力に加えて高い支持を獲得している伊藤沙莉。今年の活躍は特にすさまじく、ドラマ、映画、アニメ声優、バラエティ、CMと、彼女を見ない日はなかったと言っていい。人気実力派女優のトップにいるひとりであることを印象付けた1年だった。中でも自粛期間に重なる4月から5月末に放送された『いいね!光源氏くん』(NHK総合)は、現代へとやってきた光源氏を演じた千葉雄大とのコンビが当たり、視聴者を癒した。同ドラマは、この24日夜と25日深夜のクリスマス期に一挙再放送。ヒロインとして繊細な心の動きを見せた伊藤の魅力を改めて感じることができる。

『生理ちゃん』(c)吉本興業 (c)小山健/KADOKAWA

 さて、周知のように、伊藤は子役出身。広く認知された『女王の教室』(日本テレビ系)でのインパクトが強く、いじめっこ役の印象を引きずった時期もあったが、現在は、等身大の20代女性として輝きを増している。転機になったのは連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)での米子(安部さおり)役だろうか。その後ドラマでは、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)、『この世界の片隅に』(TBS系)、『獣になれない私たち』(日本テレビ系)、出演者たちが見事に響き合っていた『これは経費で落ちません!』(NHK総合)など、映画では『寝ても覚めても』、『生理ちゃん』ほか、そして『全裸監督』(Netflix)といった作品を経て人気女優となった。

『寝ても覚めても』(c)2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINEMAS

 伊藤には何度か取材をしているが、ある時、「昔はみんな(大人たち)が自分の隣にいる人気の子を見ていた。でもいつからか、私自身を見てくれるようになった。視界に入れてもらえるようになった」と話していた。もとより役者としての実力はあったところに、どこかで女優Aではなく、伊藤沙莉が求められている実感を得て、役者としても新たな扉が開いたのかもしれない。また、今でも「鏡を見るのは苦手です」と語ったり、周囲からはギフトに思える特徴的なハスキーボイスも、「苦手だった」と話しており、コンプレックスを抱えたうえで女優業に臨み、自分の役柄や相手役に向き合うからこそ、深さを感じさせ、共感を呼ぶのではないだろうか。

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