2020年の年間ベスト企画

年末企画:加藤よしきの「2020年 年間ベスト映画TOP10」 厳しい状況だが劇場や配信で良作が

『タイラー・レイク―命の奪還―』Netflixにて配信中

 5位の『タイラー・レイク―命の奪還―』(2020年)は、再びNetflixオリジナル映画。傭兵が戦場で必死こいて戦う。それだけの話なんですが、見たことのないアクションが連発。これほどストイックな企画が通ったのが、まず驚きです。アクションの凄さはいくらテキストで書いても伝わらないと思うので、これはもう百聞は一見に如かず、「興味がある人は観てください」以上に言いようがありません。冒険小説『暗殺者グレイマン』の実写版も楽しみだなぁ。

『ハスラーズ』(c)2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 そして4位の『ハスラーズ』(2019年)。これは久々に泣くかと思いました。女性ストリッパーたちが時代に翻弄される中で犯罪に手を染めていく物語です。『友へ チング』(2001年)の惹句じゃないですが、「俺たち、遠くに来すぎたよ……」映画の傑作でした。そして何よりジェニファー・ロペスという人物の凄味を感じましたね。特に彼女がストリッパー衣装にゴツいファーのコートを羽織って屋上で煙草を吹かしているシーンは今すぐTシャツにしてほしいです。

『ホワイト・ストーム』(c)2019 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED /FOCUS FILMS LIMITED.

 3位に食い込んだ『ホワイト・ストーム』(2019年)は、今や香港の鉄板コンビとなったアンディ・ラウ主演×ハーマン・ヤウ監督による、男たちの大暴走ノーワル・アクション。久しぶりに劇場で爆破と銃声を堪能できました。能面のような顔のアンディと、例によってゲス顔のルイス・クーが、通行人が大勢いる地下鉄の駅構内に車で突っ込んでいくシーンは今年一番盛り上がったかもしれません。香港アクション健在なり。

『アンカット・ダイヤモンド』Netflixにて配信中

 栄えある2位は、三度Netflixオリジナル映画『アンカット・ダイヤモンド』(2020年)です。どうしても配信サイトの映画は(僕の加齢の関係で)途中でトイレ休憩などの一時停止をしがちなのですが、本作に関してはそういう瞬間が全くありませんでした。アダム・サンドラーが繰り広げる借金地獄は1秒たりとも画面から目が離せません。手に汗握りっぱなしで、体感2キロは痩せました。これは完全なウソ科学に基づく記述なんですが、観ると痩せるダイエット映画としてオススメしたいです。

『フォードvsフェラーリ』(c)2020 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 そして1位ですが、今年は『フォードvsフェラーリ』(2019年)に送りたいと思います。これには私がアメリカ映画に求める全てがありました。荒々しくもタフでカッコいい大人たちの粋な人間模様、デカくてカッコいい車……そして何より、全編を通して鳴りまくるエンジンの爆音です。あの爆音に身を任せる感覚は、一生忘れることはないでしょう。ド迫力のレースシーンは、『ワイルド・スピード』シリーズや『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)が紡いできたカーチェイスの歴史を、また1ページ更新したとすら思います。幼少期からアメリカに漠然とした憧れを抱いている身として、映画館で映画を体験することが大好きな人間として、今年は本作にベスト1を捧げます。

 そんなわけで、今年は基本的に辛いながらも、それはそれとして、楽しい映画に10本も出会えた1年でした。これが来年には全てが解決して、人類的にもオールオッケーになるとは到底思えませんが、こと映画に関していえば、話題作はごまんと控えているわけで。今はただ耐えつつ、まだ見ぬ傑作に期待して堪え難きを耐えたいと思います。

TOP10で取り上げた作品のレビュー/コラム

『タイラー・レイク -命の奪還-』はアクション映画のノウハウ満載 期待するもの全てある凄まじさ
“手を組む”距離感が絶妙! 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』アンサンブルとしての面白さ
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■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■リリース情報
『フォードvsフェラーリ』
デジタル配信中
Blu-ray+DVDセット発売中
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2020 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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