木村拓哉、『教場』の“最恐の教官”と一体化? 事務所の枠を超え、俳優たちを育成

 しかし、そのストイックな姿勢に刺激を受ける役者たちは多かった。例えば『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)で共演している松山ケンイチは木村を「憧れの人」と公言し、試写会&舞台挨拶の場で「1聞いたら1プラスα10くらい返してくれる。面白くして返してくれる」と語っていたほか、公式サイト内のスペシャル対談において、こんなコメントをしている。

「色々話を聞かせていただいて、ものすごく勉強されてるし、経験を積んでいくっていう絶対に見えない作業や、誰にも見えないところでの努力が半端ない方なんだなと改めて思いました」

 思えば、『グランメゾン東京』(TBS系)でも、これまでとはちょっと違った作品とのかかわり方を示していたように見えた木村拓哉。どうやってもオーラが浮き立ってしまう自身は、あえて一歩引くことで、周りを引き立て、「チーム」として見せることを自身に課しているようでもあった。

 そして、『教場』においては、自身の出番とは関係なく、生徒たちの所作訓練などの現場に見学に行き、訓練が終わるまで1日ずっと見るなど、“教官”としてあり続けた。こうした木村の現場での姿勢は、生徒にかける言葉やアドバイスのひとつひとつよりも、おそらく重いプレッシャーを与え、覚悟を試されるものとなっているだろう。

 余談だが、様々な媒体で、編集者や記者、カメラマンからよく聞く「これまで一番怖かった人」という名前に、木村拓哉が挙がることは非常に多い。と同時に「一番会えてうれしかった」「一番印象が良かった」という名前にも、やはり木村が挙がってくる。

 しかも、面白いのは、その理由がどちらも共通して、「ものすごくストイックで、厳しくて、細やかで、気を遣ってくれて、緊張感がすごいから」というものであること。

 こうした木村の“居方”は、ドラマや映画の撮影現場でも、取材現場でも、共通しているのだろう。

 若い世代にとっては「テレビで小さな頃から見ていて憧れだったスター」というだけでなく、同業者の先輩として彼が示す姿勢・仕事との向き合い方・背中に、共演してみて初めて感じる・わかる学びがたくさんあるのではないか。

 ジャニーズに限らず、同じ事務所の後輩を同作品にバーターとして出演させ、現場を学ばせる「事務所内の育成」というのは芸能界には数多い。しかし、木村は事務所の枠を超え、多数の後輩俳優たちに憧れと畏怖を抱かれ、刺激を与えてきた。

 さらに『教場』ではまさに「最恐の教官」という役柄と一体化することで、後輩たちとのつながり方を一層強固なものとしている。唐沢寿明が窪田正孝や竹内涼真など、後輩たちを育ててきた姿勢と同様に、木村拓哉もまた、「スター俳優」から、ドラマ界における後輩たちを育てる「育成の先生」的な存在に変わってきているのではないだろうか。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
『教場II』
フジテレビ系にて、2021年1月3日(日)、4日(月)21:00~2夜連続放送
出演:木村拓哉、濱田岳、上白石萌歌、福原遥、矢本悠馬、杉野遥亮、目黒蓮(Snow Man)、眞栄田郷敦、岡崎紗絵、戸塚純貴、高月彩良、樋口日奈(乃木坂46)、三浦貴大、佐久間由衣、嘉島陸、佐藤仁美、和田正人、高橋ひとみ、松本まりか、小日向文世ほか
原作:長岡弘樹『教場』シリーズ(小学館)
脚本:君塚良一
演出:中江功
プロデュース:中江功、渡辺恒也、宋ハナ、遠藤光貴(SWITCH)
制作協力:SWITCH
制作著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyojo/
公式Twitter:@kazamakyojo
公式Instagram:@kazamakyojo

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