志田未来、同じりんご農家でも『美食探偵』とは別人に 『エール』浩二とまき子のじれったい距離

 生き別れた弟・典男(泉澤祐希)と晴れて再会することができた鉄男(中村蒼)は、家族をテーマにした映画主題歌を書き上げる。一方、裕一(窪田正孝)は浩二(佐久本宝)を通じて農業会から頼まれた「高原列車は行く」の作曲をするために福島に滞在していた。『エール』(NHK総合)第109話では、浩二が農業指導をする畠山りんご園の一人娘・まき子(志田未来)が初登場する。

 まき子の父・畠山(マキタスポーツ)から突如聞かされる、娘が東京の親戚の会社に働きに行くという事実。思いがけぬ知らせに浩二は動揺を隠せない。しかし、それは戦死した恋人のことを引きずるまき子に区切りをつけさせたいという、父親の配慮であることを浩二は理解していた。

 そんな煮え切らない思いを抱える浩二の心情を一発で見抜いたのが、東京からやって来た音(二階堂ふみ)だった。浩二とは以前「3年以内にいい人を見つける」と誓い合った仲だ。選果作業を通じて、明るく常に笑顔でいるまき子の人柄に触れた裕一と音。浩二はまき子に恋をしているのではないかという音からの問いかけに、母のまさ(菊池桃子)は納得しつつも、「何年も一緒にいんのに一つも進展しなかった」と返す。

 浩二と同じく、まき子もまた一途な思いをそっと胸に隠していた。母の頼みから仕方なく浩二が出向いたお見合いの話題、上京するまき子を寂しく思う浩二。部屋に差し込むオレンジの夕陽が2人のセンチな気持ちを映し出す。

「東京行けば……忘れられんのかな?」

 戦死した恋人のことを思い、真っ直ぐな眼差しでつぶやくまき子は「浩二さん……私……」と彼の方に身体を向けるが、「東京行ったら動物園でも見に行こうかな」と笑顔を浮かべ、言い出そうとした本心をまた胸の奥に隠してしまうのだった。

 まき子の初登場を受け、Twitterでは「志田未来」がトレンドに。その多くのツイートが、今年4月に放送されていたドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)で演じていた古川茜の役柄と掛けたものだった。『美食探偵』でも、りんご農家の純朴な一人娘を演じ、ハンドルネームは「林檎」と呼ばれていた。彼氏の浮気相手を殺害する毒りんご事件や、マグダラのマリア(小池栄子)から殺人を指示される、その似てるけどどこか違う、朝ドラとのギャップが話題になった大きな理由だ。

 もう一歩踏み出すことができない浩二。2人の間には、まき子が大事な仕事先の一人娘だということが壁になってしまっている。「浩二さんはそれでいいんですか?」。彼の背中を優しく押す音。福島のりんごを日本中の人たちに食べてもらいたいというまき子の夢を一緒に叶えられるのは、浩二しかいない。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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