上白石萌音&岡田健史が届けてくれた恐怖体験 『ほん怖』稲垣吾郎の言葉通りの特別な夜に

 『ほんとにあった怖い話 2020特別編』(フジテレビ系)が10月31日に土曜プレミアムで放送された。

 『ほんとにあった怖い話』(以下、ほん怖)は、実際に誰かが体験したちょっとゾクッとするような話をオムニバス形式で放送するオムニバスドラマ。1999年からTVドラマシリーズ始まり、“夏の風物詩”として多くの人が楽しみにしているほん怖が今回初めてハロウィンに放送されたのだ。

 昔からホラーが苦手な筆者は気になりながらも、毎回肝心な場面は薄目でみたり、耳を塞いでみたりと恐怖から自分の身を守っていた。ただ本作で「ほん怖」クラブリーダーを務める稲垣吾郎が「『ほん怖』って怖いだけでなく、最後に寂しさや切なさが残るのを感じられて」と語り、筆者のように怖いのはダメな香取慎吾に「今年はちょっと見てほしいなって思います」とコメントしていた(参考:稲垣吾郎、『ほん怖』の見どころを語る 「香取慎吾君が“怖いのはだめだ”って」)ことから、しっかりと目を見開いて恐怖と向き合ってみた。

 今回は視聴者から募集した「もう一度見たい名作リマスター版」に加え、2つの新作が放送された。その1つが『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)で日本中を愛らしい笑顔で虜にした、上白石萌音主演の「あかずの間を造った話」だ。上白石のほか、『半沢直樹』(TBS系)で不思議と憎めないオネエキャラの黒崎を演じた片岡愛之助が出演。そんな旬の、どちらかといえば観る人を笑顔にしてきたふたりがほん怖で視聴者を恐怖におとしいれた。

 上白石が演じるのは、工務店の現場監督として働いている佐々木彩。彼女はある日、老舗旅館から宴会場の階層を依頼され、東北の温泉地を訪れていた。「古風な感じを残して、奥にある別館を隠れ家的な趣にしてほしい」という旅館の社長(田山涼成)からの依頼に「流行りの和風モダン建築ですか」と彩は心を弾ませる。しかし、片岡演じる設計士・木島から手渡された設計図は和室の設計図を3つの廊下で囲み、出入り口をふさぐという奇妙なものだった。

 さらに、今回の現場は異常な厳重体制が敷かれ、彩と現場に携わる職人は誰もが不審に思いながらも着工に取りかかる。理由を聞いても「気にしなくていい」と頑なに口を閉ざす木島。もうこの時点で視聴者は何かがおかしいと身震いしそうな設定だが、恐怖はまだまだこれから。木島に言われるがまま、燃やしたお札の灰を塗料に混ぜ込み和室の内装に使うと、職人や彩までも次々と体調不良を起こしていく。

 そんな中、最終日に作業点検をしていた彩は和室の襖の向こうから笑い声を聞いてしまう。和室には本来誰もいないはず。しかも、聞こえてくるのは「ふ、ふ、ふ」というちょっと異常な笑い声。あ~もう絶対何かいるよ、早く逃げて!という思いとは裏腹に彩は勇敢にも襖の引手に触れた。筆者が覚悟した瞬間、恐る恐る開けられた和室の中は完全に塞いでしまうにもかかわらず、豪華な装飾が……。

 後から分かったのは、和室を開かずの間にしたのは福の神を住まわせて繁栄を呼び込むための部屋にするという旅館の狙い。木島はその“神降ろし”の役割を担っていたが、旅館の社長は仕上げの段階で予算を削るために木島と彩が働く工務店をお払い箱にしてしまった。それから1年後、すっかり開かずの間について忘れていた彩は、台風の影響で旅館の一部が倒壊したというニュースを見る。そんなことしなきゃいいのに、あの開かずの間を訪れた彩。和室の前には立ち入り禁止のテープ、そして襖にはたくさんのお札が貼ってある。その瞬間、これまで恐怖に怯えていた彩の様子が一変。何かに取り憑かれたような様子で、襖の引手に手を伸ばす――。

 ……中にはおびただしい数の日本人形。でも何より、その時上白石が見せたいつもとはまた違った笑顔が恐ろしかったのは言うまでもない。そして、あまり気が進まないという理由で語られなかった後日談が後引く恐怖を生み出す。彩のように好奇心と勇気がある方は、原作コミックで記述される「あかずの間」の後日談を覗いてほしい。

関連記事