二世監督の話題作やホン・サンス最新作も! 東京国際映画祭&東京フィルメックスの注目作品を紹介

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、今年も映画祭休暇を取得予定の宮川が「第33回東京国際映画祭」と「第21回東京フィルメックス」をプッシュします。

「第33回東京国際映画祭」はデビュー作が話題となった2世監督の新作に注目

 新型コロナウイルスの影響により、SXSWやカンヌ国際映画祭は通常開催中止、アヌシー国際アニメーション映画祭はオンラインでの開催に移行するなど、映画興行と同様、大きな選択を迫られた2020年の各国の映画祭。しかし、ここ日本では、例年と多少かたちは違えど、映画館で作品を鑑賞できる映画祭が同時期に開催される。10月31日から11月9日かけて六本木地区を中心に行われる「第33回東京国際映画祭」と、10月30日から11月7日、そして間をあけて11月22日にも開催される「第21回東京フィルメックス」だ。東京フィルメックスは例年11月中旬から下旬にかけて開催されてきたが、今年は東京国際映画祭とほぼ時期を同じくして開催される。リアルでの開催自体は大変喜ばしいことだが、映画ファンにとっては時期が被っているというのは悩ましいところ。とういうわけで、今回は「第33回東京国際映画祭」と「第21回東京フィルメックス」の上映作品の中から、個人的なオススメ作品をいくつかピックアップしていきたい。

 まずは「第33回東京国際映画祭」から。監督やキャストが登壇し、作品についてのQ&Aや舞台挨拶を行ってくれるのが映画祭の大きな醍醐味のひとつ。しかし今年は、日本映画を除くほぼ全ての作品のQ&Aや舞台挨拶はオンラインで行われる(映画の上映とは別日程)ということなので、世界各国の映画祭で話題になった作品や、日本での公開が現時点では決まっていない作品をおさえておきたい。

『ポゼッサー』

 今年のラインナップの中で個人的にもっともテンションが上がったのは、日本では2013年5月に監督デビュー作『アンチヴァイラル』が公開されたブランドン・クローネンバーグ監督の最新作『ポゼッサー』。遠隔で人をコントロールし暗殺を実行する女と、人格を乗っ取られる男の攻防を描いた、スタイリッシュ・バイオレンスと心理SFの融合作、という説明だけで心が惹かれる。『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のアンドレア・ライズボロー、『Girls/ガールズ』のクリストファー・アボット、『逆光』のロッシフ・サザーランドと著名なキャストが集まっており、デヴィッド・クローネンバーグ監督の息子という引きもあるので日本公開もありそうな気がするが、前作とは異なり海外では批評家受けもいいようなので期待大。上映機会は2回あり、まだチケットも残っているようなので気になる方はぜひ。

『チンパンジー属』 Lav Diaz

 そして東京国際映画祭では毎年恒例となりつつあるラヴ・ディアス監督の最新作。昨年上映された、ラヴ・ディアス監督にとって初の近未来SF『停止』が4時間43分という上映時間で、劇場公開された『立ち去った女』に続き「ラヴ・ディアスにしては短い!」と思ったものだが、今回上映される『チンパンジー属』はなんと2時間37分という短さ(それでも一般的な比べると十分長いのだが……)。“人類は果たして猿から進化しているのか”というテーマが描かれるという本作。ラヴ・ディアスの作品はとにかく画作りが尋常ではないレベルのカッコよさなので、今回もそこに注目したい。

 昨年まで実施されていた「インターナショナルコンペティション」、アジアの新鋭監督を集めた「アジアの未来」、日本映画の気鋭作品をそろえた「日本映画スプラッシュ」の3部門は、今年は「TOKYOプレミア2020」として1つの部門に統合されるなど、部門においても例年と変化が見られる今年の東京国際映画祭だが、毎年隠れた良作が上映されているユース部門にも触れておきたい。その中でもTIFFティーンズとして上映される、逆境をはねのけ前進しようとする17歳の少女の姿を描く青春映画『私は決して泣かない』、男の子の体で生まれ、女の子になることを夢見るサシャの姿を描いたドキュメンタリー『リトル・ガール』、社会の底辺で生き延びようと闘う姉弟の姿をモノクロで描く思春期映画『愛しい存在』の3本は要注目だ。

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