トレンディドラマの波は今もなお健在? 柴門ふみ原作がドラマ界にもたらした影響

 恋愛ドラマの主流が男女の軽妙な駆け引きを描いたものから、難病モノや、恋愛ができない男女の恋愛を青春ドラマが主流となるにつれて、柴門ふみの作品がドラマ化される機会はどんどん減っていく。その意味で一度は忘れられた存在だったのだが、今年に入って柴門ふみ再評価の波が高まっている。

 FOD(フジテレビ・オン・デマンド)とAmazonプライム・ビデオでは、リメイク版『東京ラブストーリー』が配信され、BSテレ東では『女ともだち』が再度ドラマ化された。そして今回の『恋する母たち』である。契機はおそらく2016年の『東京ラブストーリー ~After 25 years~』(小学館)だろう。ビッグコミックスピリッツで読み切りが掲載された後、『女性セブン』で連載された本作では、主人公の永尾完治と赤名リカのその後が描かれたのだが、このあたりで時代が一巡したのを感じる。おそらく、80年代末から90年にかけての豊かだった日本の空気感を、ノスタルジーの対象として日本人が楽しめるようになったのだろう。同時に感じるのは、赤名リカ世代の女性が持つたくましさだ。

FODオリジナルドラマ『東京ラブストーリー』(c)柴門ふみ/小学館 フジテレビジョン

 若い時に柴門ふみ原作のドラマを観ていた現在は40代後半から50代となっている世代の女性は今でも元気で、主婦になっても恋と仕事を諦めないタフさがある。そういうファンがいるという確信があるからこそ、『恋する母たち』などの柴門ふみ作品のドラマ化が続いているのだろう。

 『あすなろ白書』を手掛けた北川悦吏子も来年、母親と娘の恋活を描く『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)を控えている。かつてはこの世代の持つ元気さに距離を感じたが、今はむしろ、そのバイタリティに憧れを感じる。何歳になっても、恋に仕事に大暴れしてほしい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
金曜ドラマ『恋する母たち』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:木村佳乃、吉田羊、仲里依紗、小泉孝太郎、磯村勇斗、森田望智、瀧内公美、奥平大兼、宮世琉弥、藤原大祐、渋川清彦、玉置玲央、矢作兼、夏樹陽子、 阿部サダヲ
原作:柴門ふみ『恋する母たち』(小学館 ビックコミックス刊)
脚本:大石静
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
演出:福田亮介
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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