『竜の道』“因果応報”の結末に 副題「二つの顔の復讐者」が示唆する復讐の本質

『竜の道』“因果応報”の結末に 副題「二つの顔の復讐者」が示唆する復讐の本質

 一方で、フリーライターの沖(落合モトキ)に、斉藤一成を名乗っていた頃に犯した殺人事件と、被害者の息子について問われた竜一が弁明するシーン、ここで竜一と源平の言葉が皮肉なまでに重なってしまう。「お気の毒に。でも私が斉藤だった証拠はない」と、それはまるで追い詰められた際の源平の「お気の毒に。でも証拠がなければ法では裁けない」と同じ理屈である。

 源平はキリシマ急便を大きくするために、竜一は育ての親の仇を取るために「目的のために手段を選ばない」。また竜一の中でその自覚があるからこそ、揉み合った際に竜二の口から出た「目的のために人を殺すんなら源平と変わらないだろ」という言葉が胸に突き刺さる。そして最後に源平本人と対峙したときに出た「お前殴ればこっちの拳も痛ぇんだよ」がこの23年間の竜一の本心なのだろう。副題の『二つの顔の復讐者』とは、何も竜一と竜二のことだけでなく、復讐を企てる中で、自分が新たな復讐の種を撒く側にも回ってしまっている、そのあまりに悲痛な皮肉についても示唆しているように思える。

 キリシマ急便が竜二の働きかけによって「法的に何の問題もないM&A」によって大手運送会社に吸収合併され、消失してしまうのもまた「因果応報」。その後、竜一から渡された銃の引き金を引く寸前に源平に対して無念、雪辱、恐怖、未練、後悔、様々な感情を与えられたであろうことも、それを経て「この世の終わり」を束の間感じさせておきながら実は銃弾が入っておらず「生きていく」しか道がなくて逃げられないことも。またさらにはそれが竜一によって「生かされた」という事実に他ならないことも含めて、重層的な復讐がここで完遂したとも言えるだろう。竜一が源平を最終的に生かしたことが本作における最大の救いなのだろう。

 他にも本作が残した「救い」がちらほら芽吹き出していた。復讐の連鎖が断ち切られ、残された者たちが他の誰でもない「自分自身」の人生を歩んでいってくれることを願ってやまない。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■作品情報
『竜の道 二つの顔の復讐者』
出演:玉木宏、高橋一生、松本穂香、細田善彦、奈緒、今野浩喜、渡辺邦斗、 落合モトキ、西郷輝彦(特別出演)、松本まりか、斉藤由貴、遠藤憲一ほか
原作:白川道 『竜の道』 (幻冬舎文庫)
脚本:篠崎絵里子(「崎」は「たつさき」が正式表記)、守口悠介
音楽:村松崇継
主題歌:SEKAI NO OWARI 「umbrella」(ユニバーサル ミュージック)
オープニング曲:ビッケブランカ 「ミラージュ」(avex trax)
プロデュース:米田孝、水野綾子
演出:城宝秀則、岩田和行、紙谷楓、吉田使憲
制作:カンテレ、共同テレビ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ryu-no-michi/
公式Twitter:https://twitter.com/ryunomichi_ktv

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