『半沢直樹』大和田常務を愛すべき男へ昇華 香川照之の熱さから溢れる愛嬌

香川照之の熱さから溢れる愛嬌

 香川の役者デビューは、東京大学を卒業した翌年の1989年。初期には浜木綿子の息子としていわゆる2世俳優と言われることもあったが、早くもオリジナルビデオシリーズ『静かなるドン』で人気を得る。そしてカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した中国映画『鬼が来た!』で役者としての実力を知らしめ、その後も演技派として『ゆれる』『トウキョウソナタ』など多くの映画に出演し、キャリアを重ねていった。

 そして香川自身のパワーを解放させた、クセのあるキャラクターを演じるに従い、人気を獲得していく。映画では『カイジ 人生逆転ゲーム』シリーズの利根川幸雄、『あしたのジョー』の丹下段平、『るろうに剣心』の武田観柳ほか、ドラマでは大河『龍馬伝』(NHK総合)の岩崎弥太郎、『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS系)の佐田篤弘など、いずれも役名を聞いてその姿がパッと浮かぶ。

 さらに近年、NHK Eテレの『香川照之の昆虫すごいぜ!』のカマキリ先生や、Twitterを活用したPRの巧みさ、バラエティ番組『ぴったんこカン・カン』(TBS系)などで見せる熱い素顔が人気に拍車をかけた。どこかスマートさがかっこいいとされる今にあって、全身全霊で人生を楽しんでいるように映る香川のパワフルさは、リミットを超えて愛されキャラに。そこへ来て大和田がバッチリとハマった。いや、どこか愛嬌ある大和田へと香川がハメてみせた。

 2020版『半沢直樹』も終盤。原作にいない大和田は、一体どんな離れ業を見せてくれるのだろう。そして大和田とともにすっかり人気者になった熱い漢・香川照之。だが、そこは根っからの役者だ。大和田やカマキリ先生が頭をよぎり、愛着を感じている状態を逆手にとって、また新たに何かを仕掛けてくるかもしれない。反吐が出るほどの悪人や、箸にも棒にも掛からぬ人物、惚れ惚れするようなヒーローだって、お手の物のはず。いずれにせよ、これからもワクワクさせてくれる役者であることは間違いない。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる