『わたナギ』特別編が示したそれぞれの結婚のかたち 心のライフワークバランスを考える後日談に

 また、メイが反省すべき部分がもう一つ。言葉に出した不満と本音がねじれてしまっていることだ。ナギサさんが靴下や換気扇について不満を言うのは、それを「直してほしい」というストレートな本音。だが、メイはナギサさんへの反論に「いびき」を持ち出したのは、「いびきを今すぐどうにかしてほしい」という思いに加えて、「私だって我慢しているのをわかって」という別の欲求が入り混じっていた。

 ナギサさんはもう少しメイの成長を気長に待ったほうがよかったし、メイはそのストレスを溜め込まずにまっすぐ伝えたほうがよかった。でも、それも今回初めてぶつかってみてわかった話。メイとナギサさんは、その日のうちに感情的になってしまったことに対して、お互いに謝罪。そして、これからも話し合って、それぞれの得意なところでカバーしながら、2人だけの結婚のかたちを模索していこうと歩み寄る結末に。

 興味深かったのは、その“得意なところ”には、やはりそれぞれの職業柄がチラ見えしたこと。ナギサさんは、乱れた部屋を整理整頓するかのように、メイができそうなところを一つずつ提示。そしてメイもMRの人脈を駆使して、いい耳鼻科の先生を紹介するという建設的な提案をする。

 仕事のできるメイとナギサさんは、「結婚=プライベートモード」と振り切るのではなく、「自分の得意を発揮する場=ビジネスモード」も取り入れたほうがうまくいくのではないだろうか。オムライスにケチャップをかけるときは、思い切りプライベートモードに。そして今後の話し合いをするときは、冷静なビジネスモードに……。

 日本では、年々共働き夫婦が増え続けているという。外で一生懸命働く人ほど「家の中ではプライベートモード全開で甘えたい」という気持ちになりやすいかもしれない。でも、それは夫婦お互い様だ。求め合うばかりでは、ぶつかるのは目に見えている。

 「わかってほしい」「察してほしい」と感情的になりそうなときこそ、家族を仕事相手と想定してみる。ビジネスモードで目の前の問題を見つめれば、もう少し冷静に対応できるかもしれない。例えるなら、家族間における心のライフワークバランス。どちらかがずっとビジネスモードを強いられないベストなバランスを築き続けること。そう思うと、つくづく結婚はゴールなんかじゃない。生涯続くライフワークシナジーだ。

■配信・リリース情報
『私の家政夫ナギサさん』
Paraviにて全話配信中
2021年1月13日(水)Blu-ray&DVD-BOX発売
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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