大森南朋、松重豊や光石研らとは一味違う“癒し系おじさん”俳優に 「何か裏がありそう」との声も

 そんな一味違う“癒し系おじさん”枠に、大森南朋が参入した。三池崇史監督の映画『殺し屋1』でイチを演じて弱さと異常性を共存させ、およそ20年後となる今年公開された同じく三池監督作『初恋』では、悪徳刑事を気だるさのなかにも軽やかさを内包させて演じた大森。なかでも彼が放つ魅力は、代表作に挙げられるNHKドラマ&映画『ハゲタカ』や、映画『ヴァイブレータ』、『東京プレイボーイクラブ』、『さよなら渓谷』など、ジャンルを問わずに感じさせる、どこかアウトロー的な空気をまといながらの匂い立つ色気だろう。一方で、特に近年は、ドラマ『コウノドリ』(TBS系)シリーズでの新生児科の部長など、色気を封じて柔らかな役柄も演じてきた。それでもナギサさんほどの“癒し系おじさん”は新鮮だ。

 本ドラマの主人公のメイは、製薬会社のMR(医薬情報担当者)という常にスキルアップが必要な仕事を、周囲には余裕を持ってこなしているように見せながら、必死に努力をして頑張っている。「メイなら」「相原さんなら」“やればできる”との母親や上司の善意で包まれた呪いの言葉に、キャパオーバーに陥るメイを、完璧な家事代行で支えるだけでなく、「相原さんは十分に頑張っています」と認めてくれるナギサさんの微笑みには、思わず「我が家にもナギサさん、お願いします!」と手を挙げたくなる。

 そんな優しいナギサさんだが、イマイチ奥が見えないところもある。本作は、四ツ原フリコのコミック『家政夫のナギサさん』を原作にしているが、タイトルも違えば、メイを取り巻く人々もドラマ用に変更されており、瀬戸康史演じるメイの仕事上のライバルにして完璧好青年の田所も、イマドキの新人君・瀬川(眞栄田郷敦)も、メイの同僚で親友の薫(高橋メアリージュン)も、みなドラマ版のオリジナルだ。

 つまりこれからの展開が読めない。さらに、これまでの大森のイメージも手伝い、「ナギサさん、何か裏があるのでは?」「ただの癒し系で終わるとは思えない」との声も聞こえている。新作ドラマならではの先が見えない物語とともに、多部の共感誘う愛らしさに加え、“癒し系おじさん”俳優としては新星となる大森南朋の新たな魅力を十二分に堪能したい。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■番組概要
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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