『MIU404』が暴き出すあらゆる人生の障害物 テレビドラマとしての気概と妙技に目が離せない

 知る機会がないと興味も持てない。でも、多くの人が興味を持っているのだとわからないと、知る機会が少なくなっていく。その知る機会が少ないことそのものが、誰かの人生の障害物を取り除く術を奪っていることもある。おもしろおかしいことばかりではない、この社会で。数の論理に負けそうな人たちに起こっていることを、真面目に伝えていくことがどれだけ大切なことか。それをテレビドラマとして描くことに、このドラマの「他がやってないことやろうって気概」を感じずにはいられない。

 カタツムリになって、殻の中で聞きたい言葉だけを聞けて生きていけたらいいけれど。残念ながら、そんなに社会は甘くない。この社会にはあらゆる問題が渦巻いている。個人が罪悪感を抱いて心を痛めても、何十万人単位の問題をすぐに解決することはできない。だが、それでも少しでも生きやすい社会になるように、夢が幻想で終わらない国であるように。私たちができることは、あらゆる人生の障害物を知ろうとすること。

 人生のピタゴラ装置から落ちそうになった人を「救う」なんて、大それたことはできなくても、いっしょにもんじゃ焼きを食べたり、美しい景色を見つめる。そのくらいしかできないけれど、それが誰かのまっすぐ走るきっかけになるかもしれないのだから。

 とはいえ、誰かの人生を知るというのは、身近な人こそ難しかったりする。次回は、ついに伊吹が志摩の過去に触れることになりそうだ。相棒の“不審死“とは、UDIラボが脳裏をよぎる。まさか、そんなことは……と頬が緩む。そして、第3話で逃走した陸上部員の成川岳から、RECのもとに助けを求めるメッセージが届き、再びあの謎の男が登場しそうな予感だ。現実社会の問題を鋭く突きながらも、エンタメとしてしびれさせられる妙技に、今後も目が離せない。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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