『今日から俺は!!』福田雄一が構築する卓越した世界観 バラエティ作家を経て確立したカラー

 福田雄一は、劇団ブラボーカンパニーの座長として舞台を手掛ける一方、フリーの放送作家として『笑っていいとも!』や『SMAP×SMAP』(共ににフジテレビ系)といったバラエティ番組に参加。同時に映画やテレビドラマの脚本も多数てがけているが、映像作家としてのカラーが確立され、大きく注目されるようになったのは脚本と演出を担当した堂本剛主演の『33分探偵』(フジテレビ系)だ。

 本作もまた、チープさを逆手にとったコミカルなミステリードラマだったが、同時に感心したのがコメディ俳優としての堂本剛の魅力を見事に引き出していたことだ。

 元々、福田は堂本が19歳の頃からバラエティ番組などで交流があり、お互いの家に遊びに行ったり、いっしょに釣りに行くような仲だった。だからこそ福田は、彼の魅力を熟知していた。俳優としてはナイーブな青年役を演じることが多かった堂本をあえてコメディに抜擢。新たな才能を引き出すことに成功した。

 逆に『銀魂』では悪役の高杉晋助に抜擢。悪役を演じる堂本を見たいというのは福田の悲願で、この先の堂本のキャリアを考えて、やるべきだと福田が推したことで実現した。どちらも見事なキャスティングである。堂本を筆頭に、ナイーブな好青年を演じていた主演級の若手男性俳優が福田のコメディ作品に出演することで大化けするケースは多い。

 一方、女優では『銀魂』における橋本環奈の起用方法が実に見事で、それ以降の彼女は水を得た魚のように女優として生き生きとしている。「コメディを制するものはすべてを制す」という言葉があるのかどうかは知らないが、福田雄一作品で演技の幅を広げる役者たちを見ていると、そう感じる。だからこそ、福田雄一作品には魅力的な俳優が多数出演しているのだろう。

 8月からは、ムロツヨシと永野芽郁が親子を演じるドラマ『親バカ青春白書』が日本テレビ系の日曜夜22時30分からはじまる。新垣結衣が久しぶりにドラマ出演することも話題だが、彼女が福田雄一作品で母親役を演じることで、どんな化学変化が生まれるのか。今から楽しみである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■公開情報
『今日から俺は!!劇場版』
全国公開中
出演:賀来賢人、伊藤健太郎、清野菜名、橋本環奈、仲野太賀、矢本悠馬、若月佑美、柳楽優弥、山本舞香、泉澤祐希、栄信、柾木玲弥、シソンヌ(じろう・長谷川忍)、猪塚健太、愛原実花、鈴木伸之、磯村勇斗、ムロツヨシ、瀬奈じゅん、佐藤二朗、吉田鋼太郎
原作:『今日から俺は!!』西森博之(小学館『少年サンデーコミックス』刊)
脚本・監督:福田雄一
配給:東宝
(c)西森博之/小学館 (c)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kyoukaraoreha/

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