『やまとなでしこ』はなぜレジェンドとなったのか 松嶋菜々子と堤真一の間に生まれた化学反応

 そんな正反対の経歴を持つ松嶋と堤が、『やまとなでしこ』で初めて恋の相手役となり、その関係のままに桜子と欧介が運命の出会いを果たす展開を演じたからこそ、このラブストーリーは初々しく魅力的に映ったのではないか。生まれは貧しいが、キャビンアテンダントとなってからはハイブランドの服に身を包み合コンざんまい。華やかに生きてきた桜子には美貌と長身のスタイルを誇る松嶋のスターとしての輝きが必要だった。高飛車で性格が悪いようにも見える桜子を演じきる思い切りの良さも光る。一方、人生負け組のように見えるが誠実に生きていて、好きな女性には一途なところが魅力の欧介は、着実にキャリアを積み重ねてきた堤が演じたことでリアルな男性像になった。放送当時、まだ堤の存在を知らなかった視聴者も多かったので、松嶋というスターと相対する彼は、高嶺の花に恋してしまう欧介そのものに見えたはずだ。そして、演技へのアプローチも何もかも違うはずの2人の間に化学反応が生まれた。

 桜子は欧介が医者ではないと知って彼をふり、欧介も玉の輿狙いである桜子の本性を知る。遠慮がなくなって「あなたは嘘つき」「あなたの顔以外、どこを愛せって言うんですか」とお互いに本音むき出しでディスりあう中盤の関係性も面白い。桜子の婚約者となった医師の東十条(東幹久)は桜子の素顔と彼女が抱えるトラウマを知らないが、欧介はそれを知っていく。桜子は「もう貧乏な暮らしはしたくないから、絶対にお金持ちと結婚する」と思い込み、自分に自分で呪いをかけている。まるでおとぎ話のように、欧介がその呪いを解けるのかどうかが後半の見どころで、クライマックスでもまた2人のキャリアの違いが良い効果を生み出している。『やまとなでしこ』の後、松嶋と堤が再び恋人役を演じることがなかったのも、このドラマがレジェンドとなった理由。20年前の制作時にしか生まれなかった2人の化学反応をもう一度、じっくりと味わいたい。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『やまとなでしこ 20周年特別編』
フジテレビ系にて放送
第2夜「いつか王子様が」:7月13日(月)21:00~22:48
出演:松嶋菜々子、堤真一、矢田亜希子、筧利夫、須藤理彩、東幹久、森口瑤子、西村雅彦ほか
脚本:中園ミホ、相沢友子
主題歌:MISIA「Everything」(Sony Music Labels)
企画:石原隆
演出:若松節朗、平野眞
プロデュース:岩田祐二
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビジョン
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/nadeshiko_sp/
公式Twitter:@nadeshiko20th

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