野木亜紀子作品は“副題”にも注目! 『MIU404』第1話と第2話でまったく色合いの違う物語に

 加々見は何度も、血で汚れた手を洗い落とそう、拭い去ろうとする。その反面、身体の至る所、現場の至る所に、血がべったりと付着していることにはさして頓着しない。

 まるでシェイクスピアの『マクベス』におけるマクベス夫人が、自分の犯した罪から逃れようと、幻覚によって見える、洗っても消えない血をなんとか洗い落とそうとし続けていたように。彼はその手が犯してしまった罪をも拭おうとするかのように、必死で手を洗うのである。

 最後に人質の夫・将司(鶴見辰吾)が、逮捕された加々見に向かって呼びかけた「いつかまた3人でドライブしよう。今度こそうどん食おう」という言葉に思わず胸が詰まる。死んだ息子への後悔を抱きながら生きてきた田辺夫婦が、「信じる」ことによって構築した、疑似家族としてつかの間成立しかけた幸せは、加々見の逮捕によって一旦途切れたとしてもまた続く。それが例え現実的にはあり得ないことだとしても、彼らはその夢の続きをも胸に抱いて、この先の人生を生きていくことだろう。

 そして、視聴者もまた、NHK連続テレビ小説『スカーレット』の八郎役の時のように屈託なく笑った松下・加々見が、田辺夫婦と共にうどんを食べている未来を、叶わぬ夢ながら願わずにはいられないのである。ここに、田辺夫婦と加々見と、伊吹と、口にはしないまでも志摩と、そして視聴者の「切なる願い」が集結する。

 第1話と第2話、全く違うタイプの色合いの物語を繰り広げた『MIU404』。なにやら重大な過去を抱えていそうな志摩の秘密や、麻生久美子演じる上司・桔梗との関係も気になる。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/

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