『The Last of Us』のように今後はドラマ化が増加? ハリウッドにおけるゲーム実写化最新事情

『モンスターハンター』(c)CONSTANTIN FILM Produktion Services GmbH

 現在ハリウッドでは『名探偵ピカチュウ』『ソニック』以外にも、ゲームの実写化企画が数多く進んでいる。まずは9月4日の公開が決まっている『モンスターハンター』がある。主演はミラ・ジョヴォヴィッチだが、彼女は『バイオハザード』シリーズの出演によって、アクションゲーム系の実写化の主役というイメージが定着した感がある。またアメリカのゲームでは、『ソウ』シリーズや『アクアマン』で知られるジェームズ・ワンがプロデューサーを務めるリブート版『モータルコンバット』が、2021年1月の全米公開(日本公開未定)を待っている。

 企画・制作段階にあるタイトルとしては、まず長期にわたって人気を集めるゲームの実写化『ロックマン』に言及したい。本作は『フォードvsフェラーリ』や『グレイテスト・ショーマン』などを手がけたベテランプロデューサー、ピーター・チャーニンと『HEROES/ヒーローズ』で知られるマシ・オカが参加している。

 また、アドベンチャーゲーム『アンチャーテッド』の映画化企画が、やはりコロンビア・ピクチャーズの下、トム・ホランド主演で進んでいるし、世界的人気を誇るゲーム『マインクラフト』の実写映画化企画も忘れてはならない。こちらはワーナー・ブラザースから2022年公開が予定されており、近年活躍が光る俳優スティーヴ・カレルの出演が決まっている。他にも『グランツーリスモ』『人喰いの大鷲トリコ』の実写化企画が存在しているようであるが、目白押しの状態だ。

 実写ドラマ化では『The Last of Us』が注目に値する。ちょうどこの6月19日にプレイステーション用新作ソフト『The Last of Us Part II』が発売された人気ゲームであるが、2021年放送予定の実写化を手がけるのは、2019年に話題になったHBOのドラマ『チェルノブイリ』の監督・脚本コンビだ。『チェルノブイリ』だけでなく『ゲーム・オブ・スローンズ』などで圧倒的な質の高さの作品を出してきたHBOだけに、今回のドラマ化の期待も高まる。

 ところで、『名探偵ピカチュウ』のピカチュウ役に、ハリウッドのトップ俳優の一人であるライアン・レイノルズがキャストされた際、ポケモンがすでにアメリカでも長く親しまれてきたことを考慮しても、ハリウッドでの日本のゲームの立ち位置が随分変わったと感じた。それだけでなく、前述のようにトム・ホランドやスティーヴ・カレルといった人気俳優がキャストされているのを見ると、メジャースタジオでのゲーム実写化にかける本気度を垣間見ることができる。

 一方で、普段はついスクリーン上に見える俳優に目が行きがちであるが、こういった作品を手がけるプロデューサーやスタジオを見てみると、特にゲームの実写化作品を扱う傾向が見えてきて面白い。

 ハリウッドのスタジオは、常に各ブランドやビジネス戦略を考えて扱う作品を決めており、映画の場合は、ゲーム化作品を多めに扱うスタジオと、そうでないスタジオは比較的はっきりと分かれている。特に日本発で世界的にヒットしたゲームも多く、日本のIPに好意的なスタジオかそうでないか、という部分とかぶることも多い。例えば、ソニー傘下にあるコロンビア・ピクチャーズは、同じくソニーのゲーム機プレイステーションの関係もあり、先に紹介した『アンチャーテッド』、映画版『バイオハザード』や『グランツーリスモ』など、多数の映画化を手がける。

 また、ワーナーは『AKIRA』『進撃の巨人』などの日本IP企画を開発中であるが、同時に『ハリー・ポッター』シリーズやDCコミックスなどのユニバース戦略に長けており、ゲーム実写化にも積極的なスタジオの一つである。また、傘下のニュー・ライン・シネマはスリラーやホラー系作品など、多くのゲームの世界観と親和性が高いジャンルを得意にしていることから、ここで扱われるゲーム実写化も多い。

 パラマウント映画は『ゴースト・イン・ザ・シェル』や『ソニック』をリリースするなど、日本のIPを上記2スタジオと同じくらい多く扱っている。現在パラマウントは、ワーナーやディズニーのような有力なユニバースを持たないが、同様の戦略に倣うのであれば、有力なゲーム作品でのユニバースを展開することも可能かもしれない。

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