豊川悦司、織田裕二、江口洋介 平成から令和まで輝き続ける俳優たちのスタイリッシュさ
同じく、90年代を牽引した俳優に江口洋介がいる。『東京ラブストーリー』で織田演じる主人公のライバル的存在を演じた江口。1993年には親のいない兄弟が肩寄せあって生きていくヒューマンドラマ『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)が大ヒット。江口の演じた「そこに愛はあるのかい」が口癖の真っ正直な長男(あんちゃん)が大人気に。1997年に続編も作られた。その後は医療ドラマ『救命病棟24時』(フジテレビ系)の第4シリーズまで主演。江口演じる孤高の天才外科医役は当たり役となった。『東京ラブストーリー』のスマートなモテ男役をやったかと思えば、『ひとつ屋根の下』では恋愛に疎そうな素朴な人物、『救命病棟』ではクールな天才と演じる役は幅広く、主役もやれば、脇で締めることもできるオールラウンドプレーヤーとして活躍し続けている。『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の第1話で詐欺に合う人物を演じたが、1話限りのゲストではなく、何かと絡んできて劇場版にも出演している。江口が出ると、画面が華やぐ。『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)では昨今、少なくなったたばこを吸う姿に昭和の刑事ドラマのニオイを感じさせていた。
豊川悦司、織田裕二、江口洋介に共通するのは様式性があること。「スタイリッシュ」という言葉を使って語ることのできる俳優たちなのである。佇まいひとつが考え抜かれて、現代劇で日常の動作にもひとつフィルターがかかって見える。それが、彼らを日本のお父さんやおじさんにさせない(演じようと思えば演じられるのだと思うけれど、決してそれが専門にはならない)。豊川、織田、江口……と五十代――豊川は2年後には還暦(!)ながら、スポーツ選手がそうそうに自分のちからを見極めて引退してしまうなかで、いつまでも引退しない三浦知良のような俳優たち。カズに憧れる人たちは、豊川、織田、江口のことも応援していると思う。やっぱり、いつまでも退かず走りつづけることはかっこいい。
■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。
■放送情報
『愛していると言ってくれ 2020年特別版』
TBS系にて放送 ※一部地域を除く
6月21日(日)14:00〜17:00
出演:豊川悦司、常盤貴子、岡田浩暉、余貴美子、鈴木蘭々、矢田亜希子、吉行和子、橋爪功ほか
脚本:北川悦吏子
プロデューサー:貴島誠一郎
演出:生野慈朗、土井裕泰、福澤克雄
音楽:中村正人(DREAMS COME TRUE)
主題歌:DREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」
製作著作:TBS
(c)TBS