『警視庁・捜査一課長』『キラメイジャー』『M 愛すべき人がいて』にみる、テレビ朝日の狙いと戦略

 新型コロナウイルスの影響でテレビドラマの制作が中断となり、旧作の特別総集編が多数放送されている今。

 現時点で放送できている新作がわずかだとはいえ、ネット上で何かと話題になるのは、テレビ朝日の作品たちだ。

 一つは、ネットの話題独占状態になっている『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日×ABEMA)。

 「運命に翻弄される主人公」「大げさでくさいセリフ回しと演技」「荒唐無稽な展開」など、ツッコミどころだらけの展開と真剣そのものの登場人物たちは、まさに往年の大映ドラマのテイストである。同じく大映ドラマテイストだった『奪い合い、夏』(AbemaTV)と同じく鈴木おさむ脚本であることから、完全に戦略であることは誰の目にも明らかだった。「面白い話があるんだけど」と前置きされると全く笑えなくなるように、狙いが見え見えのモノに対しては視聴者側も「簡単には笑わないぞ」と構えてしまう人が多いのではないだろうか。

 にもかかわらず、そんな視聴者の堅固な心構えや冷ややかな見方すらも軽く超越してしまう、暴力的なまでのパワフルなチープさと滑稽さと、衝撃のダサさ、おかしさが、ここにはあった。残念ながら、制作側の意図にまんまとのせられてしまった。完敗である。

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