朝ドラ『エール』で進化した『ラストコップ』の世代差バディ 窪田正孝×唐沢寿明の信頼感
『THE LAST COP/ラストコップ』の京極は亮太より年上だが精神年齢は20代であり、対等なバディとしての関係が成立していた。これに対して『エール』では「家」をめぐる父と子の葛藤も描かれている。呉服屋の経営が傾き、義理の兄から融資を受けるため裕一を養子に出すことを伝える場面で、三郎の「(音楽を)諦めんなよ」というセリフに対して、「残酷だよ、父さん」と裕一が言葉に詰まってしまう場面もあった。
再共演にあたって、唐沢は「窪田くんが主演だから出演のオファーを受けたんですよ。才能ある彼を応援したい」と語っている(引用:インタビュー 古山三郎役・唐沢寿明さん しんみりしたシーンでもポップに跳ねて演じています|NHK連続テレビ小説『エール』)。また、窪田も「本作では本当の親子となれて、また新しい境地に行ったなと思っています」(参考:窪田正孝が明かす、『エール』モデル・古関裕而とのシンクロ 「“愛情”を皆さんに届ける半年間に」)とコメントしており、まさに相思相愛の関係性が窺われる。
『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(NHK総合)で松嶋菜々子とともにダブル主演を務め、最近では『とと姉ちゃん』(NHK総合)で主人公の常子(高畑充希)が創刊する「あなたの暮し」編集長の花山伊佐次を演じるなど、朝ドラや大河ドラマで代表作を残してきた唐沢は、窪田にとってその背中を追う存在であり頼れる先輩。また経験を積んで朝ドラの主演をつかみ取った窪田は、唐沢から見てかわいい後輩なのだろう。唐沢の言葉からは役者としての窪田に対する信頼感が伝わってくる。
共演歴のある俳優たちが作品で再会する姿を目にすることは視聴者にとって嬉しいことだ。ちなみに『THE LAST COP/ラストコップ』で京極と亮太の同僚を演じた松尾諭は、『エール』でも裕一が勤める川俣銀行の同僚を演じているほか、三郎の妻役で出演する菊池桃子は、2019年放送の連続ドラマ『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)に唐沢演じる樋口彰吾の妻として登場する。円熟味を増した役者たちの饗宴が『エール』の世界をさらに魅力的なものに変えている。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/