朝ドラ『エール』で異彩を放つ野田洋次郎 作曲家・木枯役はまさに適役?

 はじめこそ、裕一と同じように曲を採用されなかった木枯だが、作曲家としては先にレコード発売にこぎつけ、一歩先をゆくことに。西洋音楽が得意な裕一と対照的に、木枯は大衆向けの音楽作りが得意。さらに、自身の楽曲がA面でないことに不満を漏らすなど、自分の音楽を届けたいという熱意も人一倍強い様子を見せる。“流行歌を作る”ということに関して、なかなか照準を合わせることができず苦戦する裕一とは対照的な存在だ。さらに、裕一に対して「大衆が求める歌を作るには、まず大衆を知らなきゃ始まらない」と、裕一とは馴染みの薄いカフェーに誘う。木枯がどのようにして大衆に求められる音楽を作っているかのバックグラウンドが窺えるこのシーン。木枯役のモデルと言われている古賀政男作詞・作曲の昭和流行歌「影を慕いて」を披露し、野田の美声と共に作品を盛り上げた。

 実際に音楽分野の第一線で活躍する野田が、作曲家として駆け出しの裕一の良きライバル役を演じることでより臨場感のあるシーンを作り出している。人気ロックバンドのボーカルとして知られている野田が演じるからこそ、木枯の中に存在する “脅威”の部分と“リスペクト”の部分のバランスが保たれるだろう。こうした演出もあり、『エール』はより人の心に届く“音楽”を描く作品となっている。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、古田新太、野田洋次郎、山崎育三郎、三浦貴大、柿澤勇人、加弥乃、桜木健一、一ノ瀬ワタル、大門崇、菅原健、斎藤嘉樹ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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