新型コロナウイルスの影響で波乱の春ドラマは、手練れの脚本家が描く職場のアンサンブルに注目

 そして、『半沢直樹』(TBS系)と並び、この春ドラマの大本命と言える『MIU404』は、『アンナチュラル』(TBS系)、『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)の野木亜紀子脚本。プロデューサー新井順子、塚原あゆ子監督との組み合わせは『アンナチュラル』と同じで、このチームが王道の刑事ドラマに挑むのが見もの。今回、野木はプロデューサー、監督にリクエストされ、この新ジャンルに挑むことにしたようだ。警視庁芝浦分駐所第4機動捜査隊で404号車に乗り込み、他の3チームのフォローに回る刑事を演じるのは、綾野剛(伊吹藍役)と星野源(志摩一未役)。ビジュアル的には、かつて見たことがないほどの“塩顔すぎるコンビ”で、伊吹と志摩のコミカルなやり取りはまるで令和版『あぶない刑事』といった印象も。しかし、物語は『アンナチュラル』と同じく、警視庁の働き方改革や様々な社会問題を盛り込みつつ、リアルベースで展開していく。

 野木は近作の人間ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)でもブラック労働問題を描いたが、実は『アンナチュラル』や本作のように科学捜査もの、刑事ドラマという既存のフォーマットを使ったほうが、社会への問題意識が強く出すぎず、視聴者に伝わりやすいかもしれない。野木をはじめ、ドラマ界のカッティングエッジを担う制作陣だけに、『MIU404』ではキャラクターに親近感を抱かせておいてからの震えが来るような神展開を期待したい。

 以上のように、今期は職場を中心に展開するお仕事ドラマがそろったが、現実には、新型コロナウイルス対策のため会社に出勤しないリモートワークが推奨されているというのは皮肉。社会の急激な変化にドラマがついていけていない感もしてしまうが、それだけに、今や失われた、仲間たちが和気あいあいと声をかけあいながら働く仕事場の描写を「懐かしい」「少し前までこうだった」と感動的に受け取ってもらえるかもしれない。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『ハケンの品格』
日本テレビ系にて、4月15日(水)スタート 毎週水曜22:00〜23:00放送
出演:篠原涼子、小泉孝太郎、勝地涼、杉野遥亮、吉谷彩子、山本舞香、中村海人(Travis Japan)、上地雄輔、塚地武雅(ドランクドラゴン)、大泉洋(特別出演)、伊東四朗
脚本:中園ミホほか
演出:佐藤東弥、丸谷俊平
プロデューサー:櫨山裕子、山口雅俊、秋元孝之
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/haken2020/

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