“ベタな王道恋愛”は需要あり? 今はめっきり減ってしまったジャンルの名作ドラマ

SFジュブナイルモノにはキムタクの名作も

 それから、一定層のファンが確実にいるのに、今はなかなか作られなくなっているのが、SFジュブナイルモノだ。

NHK少年ドラマシリーズ『なぞの転校生』

 1970年代にNHK「少年ドラマシリーズ」で多数の名作が生まれた。その代表作の一つで眉村卓原作の『なぞの転校生』は、2014年に岩井俊二の企画プロデュース・脚本によって生まれ変わっている(テレビ東京系)。不思議なパラレルワールドが岩井俊二ならではの映像美と音楽センスで作り出された本作は、評判となった。確実に需要はあることがわかっているのだが、その後、NHKの『アシガール』を除いて、なかなかSFジュブナイルの名作が生まれてこないのは、残念である。

 それから、冬ドラマでは珍しく『テセウスの船』(TBS系)、『10の秘密』(カンテレ・フジテレビ系)と、1話完結ではない連続モノのミステリーが登場したが、かつては脚本も非常に緻密に練り上げられたミステリーがあったものだ。

 その筆頭として挙げたいのは、野沢尚脚本の『眠れる森』(1998年、フジテレビ系)だ。『グランメゾン東京』(TBS系)、『教場』(フジテレビ系)で役者としての評価を高めている木村拓哉主演ドラマというと、『ロングバケーション』『ラブジェネレーション』(共にフジテレビ系)など恋愛モノの印象が強い。しかし、実はドラマファンの間では本作をナンバーワンとする声も少なくない。ラストまで犯人がわからない展開や、オープニングに仕掛けられた様々な伏線の回収の見事さ、ミステリーホラーというジャンルを広げた功績も大きいだろう。

佐藤健にハマった人に是非観てほしい「学園ドラマ」

 また、一時は絶滅しかけていたのが「学園ドラマ」というジャンルだ。近年、『今日から俺は!!』『3年A組―今から皆さんは、人質ですー』『俺のスカート、どこいった』などで日本テレビが積極的に復活を試みているが、過去には忘れられない名作がたくさんある。

 例えば、『白線流し』(1996年/フジテレビ系)。経済格差や現実の厳しさ、夢や挫折が切なく美しく描かれたスピッツの「空も飛べるはず」とのハマり具合も見事だった。

 また、典型的ないじめられっ子・信子、通称『野ブタ』を人気者にプロデュースしていく『野ブタ。をプロデュース』(2005年、日本テレビ系)や、ロボットの目を通して当たり前の日々の素晴らしさや人生の普遍性を描いた『Q10』(2010年、日本テレビ系)などの木皿泉脚本ドラマには、今も名作として語り継がれているものが多い。

『Q10』

 ちなみに、同作は『恋つづ』で佐藤健にハマった人に是非観てほしいドラマでもある。佐藤健が演じたのは平凡な高校生役で、当時、人気絶頂にあった前田敦子がロボット役を演じていたことも話題になった。さらに年月を経て、佐藤健が女性たちを夢中にさせた『恋つづ』と同じ冬ドラマにおいて、前田は『伝説のお母さん』(NHK総合)で子育て中の伝説の魔法使いを演じたという偶然も見逃せない。高畑充希や賀来賢人、池松壮亮、柄本時生、細田善彦、福田麻由子など、今観ると驚くほど豪華な顔ぶれが揃っているのも注目ポイントだ。

復活してほしいドラマ枠(番外編)

 最後に、ジャンルではないが、ぜひ復活してほしいのが、NHKの「銀河テレビ小説」である。

 今では朝ドラがドラマ界において最も高値安定コンテンツとなっているが、かつては朝ドラに並ぶべく、夜の連続ドラマが『銀河ドラマ』(1969年)から時間帯を変えつつ、35年間も同じような形式で放送されていた。

向田邦子原作『思い出トランプ / 男どき 女どき』

 『たけしくん、ハイ!』『続・たけしくん、ハイ!』や藤子不二雄A原作の『まんが道』、つかこうへいの『かけおち‘83』など、バラエティに富んだ質の高いドラマが多かったが、仲でも忘れられないのは、テレビ発の朗読ドラマとなった向田邦子原作の『思い出トランプ / 男どき 女どき』(1984年)である。

 5人の女優が朗読、ドラマ部分にも出演するかたちだったが、日常生活の断片を切り取る朗読には、想像力を大いに掻き立てられた。当時小学生だった自分にとっては、なんとも背伸びで知的好奇心をくすぐられるドラマ体験だった。

 とまあ、昔好きだったドラマを思い出すと、ついつい話が止まらなくなる。新型コロナの影響で在宅時間が増えているいま、近年減っているジャンルのドラマの魅力などを改めて観直してみては?

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

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