『テセウスの船』共犯者の手がかりを検証 鈴木亮平の排除を目論むみきおの真の目的とは?

 みきおの目的は、新たに見つかった絵からも伝わってくる。はりつけにされた警官とその横で泣く家族の絵は、佐野がみきおの標的であることを示していた。また、みきおが佐野に向かって放った「正義の味方は僕一人でいい」という言葉の裏には、佐野を排除するという明確な意思が見て取れる。

 佐野を狙う理由を「鈴ちゃんのためだよ」というみきおが、鈴(白鳥玉季)に執着する理由は定かではない。救出劇がみきおの自作自演であることを知らない鈴が「ありがとう」と言ってみきおに抱きつく描写があったり、未来で2人が結婚していることを考慮すると、みきおが鈴に好意を抱いていた可能性はある。通常、そのことが犯行に結びつくとは考えにくいが、常軌を逸したサイコパスならありえるのかもしれない。

 原作にないストーリーに突入するドラマ版『テセウスの船』だが、閉鎖的なコミュニティで起こる事件にタイムスリップという要素を持ち込み、さらに佐野家の絆というヒューマンドラマの要素を兼ね備えた巧みな作劇に引き込まれる。スピーディーな展開と、別世界のようなリアルな空気感に魅了されている人も多いだろう。

 第8話では、和子が明かす佐野との結婚秘話もあり、その直後、みきおが仕掛けた罠に踏み込む佐野の姿もあった。みきおは未来から来た心の命も狙っている。音臼小事件は不発に終わったが、みきおと共犯者を捕まえない限り、これからも佐野と家族は脅かされ続ける。無事に犯人を逮捕し、ふたたび佐野家の「ダー!」を目にする日が来ることを願うばかりだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/

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