学校と病院はサスペンスにうってつけ? 『シグナル100』『仮面病棟』など“閉鎖空間”が人気のワケ

 高校3年のあるクラスの生徒たちが担任教師に呼び出され、「自殺催眠」の暗示をかけられる。特定の行動をとると自ら命を絶つように刷りこまれた彼らは、生き延びるための方法を求めてもがく。そんな設定で先頃公開された『シグナル100』は、宮月新原作、近藤しぐれ作画による同名コミック(2015~2016年)の実写映画化だ。

 高校のクラスなど代表的な例だが、限定された環境条件で限定された人数が災厄に巻きこまれ、必死に状況から脱出を図ろうとする。そのようにサバイバルをテーマにしたゲーム性の高いミステリー映画が、最近目立つ。『シグナル100』の実写映画化に関しても、先行する話題作として昨年放映されたテレビドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)がすぐに連想されるだろう。このドラマは、教師が担任するクラスの生徒全員を人質にとり、課題をクリアできなければ1人ずつ命を奪うと脅す内容だった。

『シグナル100』(c)2020「シグナル100」製作委員会

 ドラマはいじめを題材にしていたし、教育問題を扱った社会性のある作品だったともいえる。だが、それ以前にまず限定された状況、限定された人数で登場人物を極端に追いつめ一気に緊張度を高めたその初期設定で注目されたのは間違いない。容易に逃げられない閉鎖的な状況を舞台として用意することは、昔からのサスペンスの王道でもある。

 しばらく前には、貴志祐介の小説『悪の教典』(2010年)が映画化(2012年)され、10代を中心にカルト的人気を得た。これは、サイコパスの高校教師が自分の悪事を隠蔽するため、校舎にいる生徒たちを片っ端から殺害する話だった。さらにさかのぼれば、高見広春の原作小説(1999年)も深作欣二監督による映画化(2000年)も社会的に物議を醸した『バトル・ロワイアル』も、この分野の古典と化している。同作は、国家の政策として、選ばれたクラスの中学生たちが殺し合いをするよう強いられる大胆な設定だった。

 学校はそもそも、校則によって生徒の行動が制限される場所である。もとから管理されているその空間において、特殊で残酷な掟が発動したらどうなるか。ルールのエスカレーションによってスリルをわかりやすく高めているわけで、考えてみれば学校はサスペンスにうってつけの施設なのだ。

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