今期、もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2020年冬の注目作ベスト5

3.ホームルーム(MBS)

(c)「ホームルーム」製作委員会・MBS (c)千代/講談社

 3位の『ホームルーム』は女子生徒・桜井幸子(秋田汐梨)にいびつな欲望を抱いた男性教師・愛田凛太郎(山田裕貴)が主人公の学園ドラマ。メガネをかけたいじめられっ子の女子高生の名前が野島伸司脚本の名作ドラマ『高校教師』(TBS系)でヒロインを演じた桜井幸子から取られており、劇伴が森田童子の「ぼくたちの失敗」に寄せていることからもわかるように『高校教師』の引用が散りばめられている。

 桜井を演じる秋田汐梨は昨年『惡の華』の佐伯奈々子役で注目された若手女優。90年代に桜井幸子が担っていた影のある美少女は今後彼女が独占することになりそうなくらいハマっている。主人公の教師を演じる山田裕貴の変態演技が若干わかり過ぎるが、だからこそ安心して楽しめるという側面もある。今後シリアスな方向に向かうのか、パロディに向かうかで評価が大きく変わるのではないかと思う。

4.この男は人生最大の過ちです(朝日放送テレビ)

(c)ABCテレビ

 4位の『この男は人生最大の過ちです』は、イケメンの社長だがドMの性癖を持つ天城恭一(速水もこみち)に奴隷にしてくれと懇願されるOL・佐藤唯(松井愛莉)を主人公にした大人のラブコメ。ドM社長をクールに演じる速水もこみちがこれ以上にないハマり役で、これは絶対にもこみちにしか演じられないキャラクター。映像もクールで音楽の使い方もカッコいい大人のドラマに仕上がっている。

5.ゆるキャン△(テレビ東京系)

(c)ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会 (c)あfろ/芳文社

 5位の『ゆるキャン△』は、女子高生がキャンプをする姿をたのしく描いた作品。原作は日常系の漫画だが、2018年にアニメ化され大きな話題となっていた。それだけに出来のよかったアニメ版と比べられ、始まる前は批判的な意見も多かったが、アニメの完コピという大胆な策に打って出たことで評価は反転し絶賛の声が多数あがっている。

 すでにビジュアルのある漫画やアニメの実写映像化における完コピ主義が正解かどうかは迷うところだが、少なくとも本作においてはうまくいっていると言えよう。何より福原遥や大原優乃といった女子高生を演じる若手女優がかわいく撮れているのはポイントが高い。これはアイドルドラマとして圧倒的に正しい。

 アニメのようにドラマの主戦場も深夜枠や配信へと移っていくのか? それを見極める上でも、この5作は重要な作品となるのではないかと思う。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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