工藤阿須加、三浦翔平、味方良介ーー『教場』木村拓哉のもとに集った才能たち
妻子持ちの元プロボクサーという、これまた異色の経歴の生徒・日下部を演じているのは三浦翔平。身体能力も高くマジメでいい男なのだが、なかなか上がらない成績に思い悩んでいるという役どころだ。
三浦といえば、すでに10年以上のキャリアがあり、30歳を超えてもなお若々しい。デビュー当初より見た目も変わらないように感じているのは筆者だけだろうか。いつまでも若々しくあるのは彼の素晴らしい魅力の一つであり、武器ともいえるかもしれないが、年相応な役どころとのアンマッチ感を抱いてしまっていたのは正直なところ。それが原因でか出演作は絶えないものの、作品ごとに大きく違う表情を見せるというよりも、特定の近しいイメージにとどまってしまっているようにも思えてならなかった。だからかこれまでの彼にはある程度の余裕が感じられたが、今作『教場』では違う。妻子持ちで、元プロボクサーという過去の栄光は遥か遠く、とにかくもう“後がない”役なのである。教官である風間に追い込まれ、全身全霊をかけて立ち上がろうとする彼の姿に注目してほしい。それは三浦がデビューしたばかりの頃のように初々しい必死さで、しかしそこには確実に、キャリアに裏打ちされた技術が感じられるのだ。がぜん、2020年の彼の活躍も楽しみになってくる。
最後に、筆者が最も注目していただきたいと思うのが、成績優秀でクールな男・都築を演じる味方良介だ。共に学ぶ「教場」の生徒たちと群れることはなく、風間からも一目置かれる役どころである。
この味方という俳優を知らない方も多いだろう。なにせ今作が初めて挑む映像作品なのだ。とはいえ、『ミュージカル・テニスの王子様』シリーズや、『薄桜鬼』シリーズなどの“2.5次元ミュージカル”をはじめ、つかこうへい作品など、相当数の演劇作品に出演し、ミュージカルからストレートプレイまでなんでもこなしてしまう俳優である。つまり、演劇界では広く知られる若きプレイヤーなのだ。とくに2017年からは3年連続で『熱海殺人事件』で座長を務め、紀伊國屋ホールを沸かし続けている。彼の魅力はなんといっても、舞台にズシリと映える体幹の良さ、発声の美しさなど、とにもかくにも演技者としての図抜けた基礎力の高さが感じられるところ。それは初の映像作品となった今作でも同じである。彼を初めて見る多くの方の印象に、強く残ることは間違いない。
映像のクオリティ、群像劇によるテーマの重奏など、映画のような満足感を得ることができる『教場』。本作には彼らのような、“若手”という枠の中でも“中堅”な印象の優れた俳優たちが集い、主演の木村との見事な演技のアンサンブルを生み出している。
■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter。
■放送情報
フジテレビ開局60周年特別企画『教場』
フジテレビ系にて1月4、5日二夜連続21時放送
出演:木村拓哉、工藤阿須加、川口春奈、林遣都、葵わかな、井之脇海、西畑大吾
(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、富田望生、味方良介、村井良大、佐藤仁美、和田正人
石田 明(NON STYLE)、高橋ひとみ、筧利夫、光石研(友情出演)、大島優子、三浦翔平、小日向文世他
原作:長岡弘樹『教場』シリーズ(小学館)
脚本:君塚良一
演出:中江功
プロデュース:中江功、西坂瑞城、髙石明彦(The icon)
制作協力:The icon
制作著作:フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyojo/index.html