『4分間のマリーゴールド』注目すべきは“純度の高さ”? 進化を遂げる2010年代の恋愛ドラマ

『4マリ』恋愛ドラマとしての純度の高さ

 『4分間のマリーゴールド』(TBS系)が12月13日に最終回を迎える。福士蒼汰演じる花巻みことと義姉・沙羅(菜々緒)の純愛と、きょうだい4人による家族の絆を描いたドラマだ。手を重ねた人間の最期の姿が見える救急救命士のみことは、ある日、沙羅が28歳の誕生日までしか生きられないことを知る。最愛の人を救うためにみことは手を尽くすが、残酷にも時間だけが過ぎ去っていく。そして2人を悲劇が襲う……。

 両親の再婚によって、ひとつ屋根の下で家族として暮らす沙羅とみことは、第3話で内に秘めた想いを確かめ合う。血のつながらない姉弟同士の恋愛を扱った本作は倫理的なタブーに触れているように見え、放送前には視聴者の反発も予想されたが、結果的に恋愛ドラマとして受容されている。劇中でも、長男の廉(桐谷健太)や末っ子の藍(横浜流星)は恋人になった2人を受け入れ、周囲の人々も祝福する。

 こと恋愛ドラマについて言えば、2010年代は受難の時代だった。世界同時不況の余韻を引きずったまま大震災を経験したこの国では、ストレートに恋愛を謳歌するような作品は敬遠され、プライム帯に大ヒットした恋愛ドラマは数えるほどしかない。『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)や深田恭子主演のラブコメディのような例外はあるが、ドラマ視聴率の上位は『半沢直樹』(TBS系)などの企業ものや刑事ドラマになった。

 そうした状況で、恋愛ドラマも生き残りを賭けて進化を遂げる。映画の世界では、ティーンをメインターゲットにした“キラキラ映画”(参考:『午前0時、キスしに来てよ』から考える“キラキラ映画”の変遷 2010年代有終の美を飾る作品に)がスクリーンを席捲したが、より幅広い年代を対象とするドラマでは、キャラクターや舞台設定に工夫を凝らしてきた。そのひとつがカップルの間に社会的・経済的なギャップを設け、それを乗り越える過程を描くというもの。経済的な格差を設定した作品として『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)や『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系)、治癒困難な病気や障害を取り上げたものとしては、前述した『大恋愛』や『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)が挙げられる。

 2010年代後半になると、社会的な題材を取り扱った作品の中から、恋愛ドラマとして支持されるものが現れる。契約結婚をテーマにした『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)や生きづらさを抱える主人公の断捨離を描いた『凪のお暇』(TBS系)は、現代の世相を反映した作品であり、「恋愛」だけではない側面を持ったことが高く評価された要因だろう。

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