今期、もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2019年秋の注目作ベスト5

 11月2日よりスタートする『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日系)をはじめ、『時効警察はじめました』(テレビ朝日系)、『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)など、続編モノが集中した2019年の秋ドラマ。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、秋ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。(編集部)

1.本気のしるし(メ~テレ)

(c)星里もちる・小学館/メ~テレ

 1位の『本気のしるし』は映画『淵に立つ』や『よこがお』で知られる深田晃司が監督。原作は星里もちるの同名漫画で、物語は会社の同僚に二股をかけている男・辻一路(森崎ウィン)が偶然知り合った謎の女性、葉山浮世(土村芳)に惹かれていくというラブストーリーだと思うのだが、うまく言葉にできない不穏なムードが延々と続いていく。

 ヒロインの浮世が優柔不断でだらしなく、その場限りの嘘を平気でついて男を誤解させて、どんどん状況を悪化させる。そのグズグズ加減が無自覚な色気となり「おれが守ってやる」と、その気になった男をストーカー予備軍に変えてしまう。

 辻は浮世をトラブルから助け、会う度にお金を借すため、どんどん泥沼にハマっていくのだが、辻も人としてどこかおかしい。二股をかけている余裕のあるモテ男という設定のためか、どうにも不穏なブラックホール感がある。

 登場するキャラクターが少なく、自然音が多用され、証明が暗く、わかりやすい顔のアップがないため、気持ち悪い男女の生態を延々と観察しているようなドキュメンタリー感がある。制作・著作はメ~テレ(名古屋テレビ)。自由度が高いローカル局だからこそ生まれた怪作だと言えよう。

2.仮面ライダーゼロワン(テレビ朝日系)

 今まで『仮面ライダー』シリーズはドラマとして扱っていいか悩んだ末に除外してきた。それはジャンルが持っている文脈の強いハイコンテクストな作品が多く、テレビドラマという文脈で評価するのが難しかったからだが、今回、2位に入れた『仮面ライダーゼロワン』は仮面ライダーを知らない視聴者の視点から見ても独立したSFドラマとして面白かったので、あえてランクインさせた。

 舞台はヒューマギアと呼ばれるAIを搭載した人型ロボットが社会の隅々まで普及した近未来の日本。ヒューマギアの派遣等をおこなう会社・飛電インテリジェンスの社長に任命された飛電或人(高橋文哉)は暴走したヒューマギアを止めるために仮面ライダーに変身して戦う。

 AI(人工知能)が進化すると人間の仕事を奪われるのではないか? というAIに対する不安がモチーフとなっているが、ヒューマギアの見せ方が秀逸で一筋縄ではいかない話となっている。役者の演技も興味深く、或人をサポートする社長秘書のヒューマギア・イズを演じる鶴嶋乃愛と、仮面ライダーバルキリーに変身する女性技術者の刃唯阿を演じる井桁弘恵の対比は見応えあり。

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