舞台『終わりのない』インタビュー

奈緒が語る、初舞台『終わりのない』に向けて 「初めては1回だけだから、全部吸収したい」

前川作品の魅力


ーー稽古は話し合いから始まるそうですが、どんなことを話すんですか?

奈緒:今回の作品は“ノスタルジー”が大きなキーワードになっているので、自己紹介がてら、みんながノスタルジーを感じるものについて話し合いました。例えば匂いからノスタルジーを感じることもあって、季節の変わり目に、ノスタルジックな気分になることとか。そういう話をみんなでしながら、前川さんが物語に繋がっていきそうなところを書き留めていました。

ーー今作はSF作品ですが、前川さんの作品の魅力はどういうところにあると感じますか?

奈緒:SFは身近にない世界が描かれるものだと思うので、まったく自分が見たことのないものが突然出てきたりすると、物語に入り込む前にびっくりして、離れていってしまう人もいると思うんです。けれど、前川さんの作品では、違和感を覚える部分はありながらも、“もっと知りたい”と感じさせてくれる。今まで作品を観てきて、それはなぜなんだろう? と思っていました。自分が実際に作る側に立ってみて、色んな方から聞くのが、「前川さんの作品は、演じる側の違和感をすごく取り除いてくれる」ということでした。だからこそ話し合いがすごく重要で、観ている人たちを絶対に置いてけぼりにせずに、“みんなを連れて行こうね”という気持ちで作品づくりをしているから、私は観ていた時に、ちゃんと物語の世界に連れていってもらえていたんだと分かりました。“分からないことは分からなくてもいい”とか、“ここは全部分かってなくてもいい”という余白の部分もすごく特徴的だなと思います。

ーーその余白がまた、前川作品の魅力でもありますよね。

奈緒:観ている側にとっては答えが全部出ていなくても、ヒントを与えてもらえるから、自分なりの解釈をして楽しめる絶妙なバランスで作られているんだなと。そして、前川さん自身が一番強く、自分が今作っているものに対して、興味を持って突き詰めているんです。だから、周囲の人も前川さんの好奇心に惹かれて付いて行っちゃうんだと思います。

ーー今回の座組の半分のキャストは「イキウメ」の劇団員の方々ですね。

奈緒:劇団員の方たちは前川さんとずっと長く一緒にされていて、そこに参加させてもらうので、最初はちょっと不安もありましたし、すごく緊張もしていました。でもみなさん、びっくりするくらい優しく迎え入れてくださいました。初舞台で、前川さんがつくるお芝居に初参加の私に「この作品をやるみんなが同じスタートだから、大丈夫ですよ。今みんな一緒ですよ」と。「分からないこともみんな同じだし、自分たちも分からないことがいっぱいあるから」という風に言ってくださるんです。だからとても居心地が良くて、これから長い期間地方に行ったりもしますし、自分が初めて経験する舞台を、素敵な方々と一緒にできることにすごく安心しています。

ーー具体的にはどんなやり取りがあるんですか?

奈緒:前川さんの話を聞いていて、「それはちょっとお客さんには分からないかもしれない」とか、逆に「それ分かる。面白いよね」みたいなやり取りがあります。それはみなさんが、長く前川さんとやってきたからこそ、前川さんの作品をどうお客さんと繋げていこうか考えられるのだと思います。客観的に考えたり、はたまた主観的に考えてみたり、バランスがすごいです。

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