舞台『終わりのない』インタビュー

奈緒が語る、初舞台『終わりのない』に向けて 「初めては1回だけだから、全部吸収したい」

「今までやってきた作品、いただいてきた役とはちょっと違う」


ーー今作が初舞台というのが意外でした。

奈緒:色んな方から「舞台やってると思ってた」と言われます。私自身はずっとやりたかったのですが、なかなか機会がなく、お会いする機会をいただいて脚本・演出の前川さんとたくさんお話をして、“こんな方と一番最初にやれたら、すごく幸せだろうな”と思っていました。決まった時は念願だったのですごく嬉しかったですし、稽古に入るまでもすごくドキドキしていました。今は、“とうとうやるんだな”と、楽しみな気持ちでいっぱいです。

ーー『終わりのない』は、古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』を原典にしたSF作品です。「わたしたちはなぜここにいるのだろう?」「いつの間にこんなところまで来てしまったのだろう?」という、“個人の旅”を“人類の旅”と重ね、現代の日常と遥か未来の宇宙をも繋げる旅についての壮大なお話。台本を読んでみて、どんな印象を持ちました?

奈緒:とても難しいし、紐解いていくほど面白くて、観たことのないものになると感じています。普通の感覚でたどり着く「答え」とはまた別の「答え」を導き出してくれる作品というか。稽古では、台本を読んで感じた違和感を、どう納得して紐解いていくか、共演者の方々と繰り返し突き詰めています。私は物語の中の違和感が大好きで、それが新しい出会いや、新しい考え方に繋がることが多いんです。あとは、“もし自分がこの舞台をお客さんとして観たらどう感じるだろう?”と、やっぱりまだお客さん感覚で考えることも多いです。

ーー奈緒さんが演じるのは、主人公・川端悠理の友達である、21世紀の現代を生きる能海杏という女性と、遥か未来で惑星調査班の一員をやっているアンという、言わば一人二役ですよね。

奈緒:アンは不思議なところがたくさんあるんです。アンはユーリ(悠理も時空をまたぐ存在)から見たアンなのか、一人の人間として存在しているアンなのか。自我がちゃんとあって存在しているように演じるべきなのか、そうでないのか。それはどのキャラクターも場面によって異なるのですが、アンも変わっていきます。そこを自分の中で整理して、挑戦していきたいと思っています。

ーーお客さんから観ていても、シーンごとに、“これは誰の視点なんだ?”みたいな作りになっているんですね。

奈緒:アンが出てくるところだけ読んでいても、あまり難しいなとは思わないんです。だからこそ、“ユーリから見たアン”、“ユーリが感じていたアン”を私も一緒に感じていないと、彼女は成立しない存在なのだと思っています。私が感じたアンの印象や、彼女だけの背景を考えて演じるのは、取り組み方として違うと考えていて、今までやってきた作品、いただいてきた役とはちょっと違うので、悩みながらやっています。

ーー物語の中心となるユーリを山田裕貴さんが演じますね。

奈緒:すごく熱い方で、山田さんが「自分が真ん中に立つんだ」という責任感を感じていらっしゃるのが、真剣さから伝わってきます。口数が多いとかではなく、深く考えるが故に出てくる疑問を、自身の中でちゃんと解釈しようとする姿勢が見えてくるんです。こうやって今までも一つひとつの作品や役に真摯に向き合ってきた方なんだなと。その佇まいからは、私の不安さえ背負ってくれそうな座長だなと感じています。

関連記事