『HiGH&LOW THE WORST』久保茂昭監督が語る制作の裏側 「普通の映画とはちょっと違う」

『HiGH&LOW』久保監督が語る

「RUDE BOYSも撮りたいとHIROさんと話している」

ーーちなみに、以前本サイトにて脚本家の平沼さんにインタビュー(参考:平沼紀久監督が語る、『DTC-湯けむり純情編- from HiGH&LOW』制作秘話 「DTCだからこそ“外に出す”ことができた」)をしたときに、撮影現場に出向いているとおっしゃっていました。監督、脚本家が現場にいる場合、意見のすり合わせはどのように行われるのでしょうか?

久保:基本的には、僕は物語を描いていて、ノリさんは芝居を中心に見てもらって、気になったことがあると、「これはどう思う?」と僕に相談してくる形ですね。たまに僕とノリさんの意見が違うときは(二人の間で)言い合いになることもあります(笑)。

ーーディスカッションが行われると(笑)。

久保:お互いが納得するまで話し合ったりはしますね。『HiGH&LOW』って普通の映画とはちょっと違う独特な現場なんですけど、そもそも、映画はいろんな人のアイデアでできていくのだと僕は思いますし、役者がアイデアを持ってきたり、カメラマンだったり、美術スタッフからのアイデアだったり、いいものが重なって出来上がるわけで。

ーーアクション監督との連携はどのように行うのでしょうか?

久保:僕と大内(貴仁)さんが現場で揉めることは多々ありますけど、これは昔からあるので、しょうがないです(笑)。でも今回に関しては、アクションについては、こちらからはあまりあれこれ言いませんでしたね。

ーー『HiGH&LOW』は趣向を凝らしたアクションシーンも見どころのひとつです。それはそういったディスカッションから生まれてくるのですね。たとえば、『HiGH&LOW  THE MOVIE』ですと、コンテナ街での大人数バトル。本作ですと、河川敷での鬼邪高と鳳仙の大人数バトルをワンカットで撮影しています。そのアイデアはどこからくるのでしょうか?

久保:もともと、河川敷の戦いのような(ワンカット)での撮影を、『HiGH&LOW  THE MOVIE』でもやりたかった。ただ、それにはスーパースライドという、10メートルを1秒で撮れるハリウッドの機材が必要なんです。EXILEの「No Limit」というミュージックビデオでは使ったことがあって、HIROさんも「いつかこれをアクションでも使ってみたいね」と話していたんですけど、アメリカからひとつ持ってくるのに4000万円かかるような高価なものなので、予算やかかる時間の問題で当時は諦めたんです。でも、いつかは実現させたいと思っていたので、今回大内さんに「あれ(スーパースライド風の撮影方法)をさ、アクション部のワイヤーだけでやれない?」と相談したんです。ワイヤーにカメラを吊って、スーパースライドのように撮影できるのではないかと。

ーーつまり手動で?

久保:これまで、大内さんと一緒にアクションを作ってきて、やっぱり彼はワイヤーアクションの使い方がすごいんですよ。それをカメラにつけたら面白いものができるのではないかと思って。「ハリウッドだったら1秒で10mだけど、大内さんなら30mはいくよね?」みたいな(笑)。

ーー3倍じゃないですか。

久保:そしたら本当に作ってくれて、さらに方向が変わってもワンカットで撮れるものになったんです。この河川敷の戦いは、『クローズ』『WORST』のやり方なんですね。『HiGH&LOW』と違って、高校生同士だから武器を使わずに拳だけでケンカをする。そこに新鮮味を持たせるためのアイデアを出し合いました。一方で、後半の団地戦は、武器を使ったり奇想天外な戦い方で『HiGH&LOW』っぽくしたいと話していて。そこの棲み分けは考えました。

ーーもう一つの決戦のシーンもすごかったですね。

久保:あれは脚本では具体的な描写はなかったんですけど、そこにアクションで達成感を伝えていきたいと、プロデューサーに相談したんです。もっと色々広げて行きたかったんですが、やっぱり日程の関係で、あれが精一杯で。

ーー『HiGH&LOW』シリーズの今後の展開もあるのかが気になります。もしかしたら他のSWORDのチームの作品も生まれる可能性も?

久保:そこはHIROさんの構想ありきなんですけど、個人的に僕はRUDE BOYSも撮りたいと前々からHIROさんと話していますね。例えば『HiGH&LOW  THE RED RAIN』でスモーキーと雨宮長男が知り合いなのは判明しているじゃないですか。もしかしたらそういうエピソードも描けるかもしれない。そうやって色々広げていけるかもしれないと思っています。

ーー期待が膨らみますね。

久保:まずは、この『HiGH&LOW THE WORST』に、どういった反響があるかによって広がり方は変わってくると思うので、皆さまの感想が楽しみですね。『HiGH&LOW』ファンの方はもちろんですし、高橋先生の世界に対して、ものすごくリスペクトして鳳仙を描いているので、『クローズ』『WORST』の原作ファンの方にも、ぜひ観ていただきたいなと思います。

(取材・文=藤谷千明/写真=大和田茉椰)

※高橋ヒロシの「高」はハシゴダカが正式表記。

■公開情報
『HiGH&LOW THE WORST』
全国公開中
企画プロデュース:EXILE HIRO
監督:久保茂昭
アクション監督:大内貴仁
脚本:高橋ヒロシ/平沼紀久、増本庄一郎、渡辺啓
出演:
【鬼邪高校・全日制】川村壱馬、吉野北人、福山康平、鈴木昂秀、龍、佐藤流司、うえきやサトシ、神尾楓珠、中島健、前田公輝
【鬼邪高校・定時制】山田裕貴、鈴木貴之、一ノ瀬ワタル、青木健、清原翔、陳内将
【鳳仙学園】志尊淳、塩野瑛久、葵揚、小柳心、荒井敦史、坂口涼太郎
【希望ヶ丘団地 幼馴染】白洲迅、中務裕太、小森隼、富田望生、矢野聖人
企画制作:HI-AX
配給  松竹
製作:『HiGH&LOW』製作委員会
(c)2019 高橋ヒロシ(秋田書店) /「HiGH&LOW」製作委員会

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