MCU作品のDisney+配信でさらに加速? 多様化するアメコミ映像作品の変遷を追う
アメコミ・ヒーロー物というのは、犯罪者とヒーローが戦うというパターンが多いから、犯罪アクション物のバリエーションとしてとらえることが出来る。犯罪物はTVドラマの鉄板だから、アメコミ・ヒーローもドラマ化しやすかったのかもしれません。またアメコミはそもそも連載という形で続けられ、定期的にヒーローたちと出会えるものだったから、連続ドラマというフォーマットがあっていたのかもしれません。
しかし89年の『バットマン』の大ヒット、2000年代始めの『X-メン』『スパイダーマン』の大成功、08年の『アイアンマン』『ダークナイト』の成功と、アメコミ・ヒーロー物は映画界のドル箱題材としてヒットされていきます。従ってドラマから映画へとなっていくわけですが、ここで注目したいのがMCU。MCUの映画の作り方は、各作品がつながっていて、続き続き……みたいに展開しています。きわめてTVドラマ的な発想です。MCUがフェーズ1、2、3、4と称している区切りはドラマで言うシーズン1、2、3、4です。MCUの仕掛人であるケヴィン・ファイギの役割も“プロデューサー”というより、ドラマで言う“ショーランナー”に近い。起用する監督もジョス・ウェドンやルッソ兄弟などTVドラマで活躍していた人が多い。極めてTVドラマ的に映画を作っている感じなのです。
アメコミ・ヒーロー物というのはスーパーパワーを使った派手なアクションもポイントだから、それを劇場で観たい。いまVFX等の進歩でそれが可能になったからアメコミ映画が多数つくられるようになったわけですが、一方ヒーローである前の主人公たちのドラマや様々なキャラクターが出てくるので群像劇としての魅力がある。先にも述べたようにもともとアメコミは連載物だから、定期的な接点と長い年月をかけて登場人物と読者の絆をつくりあげてきました。こうした要素は連続ドラマ向きなのです。だからケヴィン・ファイギは、派手なイベント映画の中に連続ドラマ的要素を入れて、MCUという独特のフォーマットを完成させたのだと思います。
一方、DCは2012年の『アロー』を皮切りにドラマをヒットさせていますが、例えば2015年の『スーパーガール』はTVドラマでありながら“かつて巨額の製作費を投じて超人が空を飛ぶシーンを見事に映像化した78年の映画『スーパーマン』級のアクション”をいとも簡単に再現しています。つまりドラマでも映画級の見せ場を届けられるようになった。
・映画はイベント的だからドラマ性が弱くなる
・ドラマは映画よりスケールが小さいから見せ場が弱くなる
こうした長所短所をクリアすると、素晴らしいアメコミ映像コンテンツが作れるわけです。
さらにドラマの場合放送だと様々な表現の規制が入りますが、配信だと過激な描写も可能になります。また最近ではドラマに映画並みの製作費をかけることもあります。ドラマが予算や表現の壁を超えるなら、アメコミ・ヒーロー・ドラマというのはこの先もっともっと
増えていくと思うのです。
一方、映画同士を組み合わせることに成功したMCUが、この先ドラマと劇場用映画との融合で成功事例を作れればアメコミ・ヒーロー映画の楽しさ・可能性もますます増えていくでしょう。アメコミ・ヒーローがこれからの映画、ドラマ・ビジネスの中でどのような進化を遂げていくかも注目ですね。
■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter
■リリース情報
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