広瀬すずが振り返る、『なつぞら』に捧げた1年間 「ギリギリなところで余裕を持って」
「自分を優先しすぎなんじゃないかと思った瞬間もありました」
ーー『なつぞら』で結婚、子育てを演じたことでご自身の考えに変化は生じましたか?
広瀬:妊娠がわかってからも「仕事を辞めたくない」と言うなつに、どんな反響があるんだろうとは気になっていました。やりたいことを優先しすぎてるように見えるのかもしれませんが、意外となつの周りにはそれに共感してくれる人がいます。それは、ある意味女性にしかわからない感覚なのかなとも思うんです。自分よりも子どもが最優先にいることの幸せもわかるけど、自分のやりたいことを辞める覚悟は簡単にできません。私は客観的になつを見て、自分を優先しすぎなんじゃないかと思った瞬間もありました。でもオンエアを見て考えると、やはり欲として自分の時間がもう少し欲しいのかなと思ってしまいました。
私は、子どもが大好きなので、10代の頃から早く子どもが欲しいと思っていましたが、実際20歳を超えて、子どもができてもおかしくない年齢になって考えてみると、なつの葛藤がすごくわかります。そこは永遠に悩むことなんだろうなと。今までは、付き合うとかめんどくさいからすぐ結婚して子どもが欲しいと思っていたんです(笑)。でもなつを演じて、それがなくなった。いろんな葛藤があって、全国のお母さんたちはすごいんだなと思うし、作中の“犠牲”という言葉を、自分も数日引きずりました。
ーー脚本を手がけた大森寿美男さんは本作を「ホームドラマ」と表現していました。
広瀬:なつのベースは柴田家で、柴田家の人たちには家族だけどどこか感謝がある。気を遣っているのではなくて、どこかかしこまっていたのが柴田家です。風車では、亜矢美さん(山口智子)とお兄ちゃん(咲太郎/岡田将生)と暮らしていて、血の繋がった家族がいると、多少の乱れが出るというか、一気に立ち振る舞いが変わった印象があります。それとは違う居心地の良さが坂場家にはあって、なつ自身が開拓していく家族が坂場家なんです。どれもテンションが違うし、一緒にいると空気感が違うんです。
ーー最終回に向けた見どころをお聞かせください。
広瀬:やっぱり千遥です(笑)。なつにとって、子どもの頃からの家族が奥原家で、お兄ちゃんと千遥の3人で会うことが、人生最大の求めているものなので、演じていても会えなかった30年分をこれから埋めていきたいと思うくらい情が出てきました。そして最後には、なつのいろんな人への感謝や、生きてきた道を記すような作品が生まれます。好きなものと人に囲まれた人生だったなつの姿から、運の強さや巡り合わせを思わせてくれるような時間がたくさん見えるので、見ている方にも自分と照らし合わせて、いろんなものを感じてもらえる作品になったらいいなと思います。
(取材・文=安田周平)
■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)~全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮、清原翔/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也、田中健二ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/