“詐欺”題材のドラマはなぜ増えている? 『サギデカ』が目指した、加害者・被害者の丁寧な心理描写
“人間”を描く安達奈緒子脚本
――安達さんの脚本は説明的になりかねないところを、すごく自然に盛り込んでいるなと感じます。
須崎:安達さんの脚本というのは巧さも勿論あるんですけど、なにより気持ちがこもってるんですよね。キャラクターの描き方にリスペクトがあるというか、刑事に対してもそうだし、犯人に対しても人間として描こうとしていますし、被害者を描くときにも突き放すようなことは決してしない。その人が何を大切に生きてきたかを描いているので、そこが本当に素晴らしいと思います。
――特殊詐欺事件というものが現在進行系で発生している中、このようなドラマを描く意義をどう捉えていますか?
須崎:振り込め詐欺の捜査を描くことによって、犯人に手の内を教えることになるのではという懸念もゼロではないとは思います。でも、刑事たちは被害者のため、これだけ本気で犯人逮捕に執念を燃やしている。そこから逃れるのは大変なんだという事実を、振り込め詐欺に手を染めている若者、あるいは手を染めようかなと悩んでいる若者に伝えたいと思いましたし、振り込め詐欺は決して正当化できるものではなく、人を深く傷つけるのだということを描きたいと思いました。
――最終話に向けて加地のその後も気になります。
須崎:振り込め詐欺に関わった若者は逮捕され出所して足を洗った後も、一般の若者と感覚がずれてしまって、元に戻れないことが多いそうです。金銭感覚も違うし、あの達成感はなかなか普通の仕事では得られず、物足りないなと思ってしまうと。そんな彼らがどうやって社会復帰していくかも考えないといけない。最終話ではその点も少し描いています。
――最後に、これから第2回の放送ですが、第5回の最終話までの見どころを改めて教えてください。
須崎:第2話では振り込め詐欺だけではなく、投資詐欺や地面師詐欺などが描かれます。伊東四朗さん演じる老人を通して、人はなぜ騙されてしまうのか、そして誰しもが老いるけれど、それはどういうことなのかを描きたいなと思って作りました。第3話は、主人公の今宮の過去に何があったのかが明らかになり、それが今の今宮の刑事としての在り方にどう関わってくるかが描かれます。そして第4話と第5話は、捜査二課チームが振り込め詐欺組織の上層部にどこまで迫っていけるかを描きます。加地は、突き上げ捜査のために泳がされていますが、その影響がいろんな意味で出てきます。今宮と加地の駆け引きがひりひりする感じで描かれているのでその点も楽しんでいただければうれしいですね。どの回も、見逃せないものになっていると思います。
(取材・文=西森路代)
■放送情報
『サギデカ』
NHK総合:毎週土曜 よる9時から9時49分<連続5回>
NHK BS4K:毎週水曜 よる7時50分から8時39分<連続5回>
再放送:NHK総合 毎週木曜 午前0時55分から1時44分(水曜深夜)
作:安達奈緒子
音楽:谷口尚久
出演:木村文乃、高杉真宙、眞島秀和、清水尋也、足立梨花、玉置玲央、長塚圭史、鶴見辰吾、香川京子、青木崇高、遠藤憲一/各話ゲスト…泉ピン子、筒井真理子、古川琴音、伊東四朗ほか
制作統括:須崎岳(NHKエンタープライズ)、高橋練(NHK)
演出:西谷真一、村橋直樹(以上NHKエンタープライズ)
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/dodra/sagideka/